当日、家人が窓口で聞いてわかったことは、要するに再開した北陸新幹線は当面、自由席だけの運行になるということでした。そこで、指定席と自由席の差額を返金してもらう必要が出てきますが、それには「到着駅で改札を出るときに、自動改札を通さずに改札窓口で払い戻しを受けてください」ということでした。もし彼らが家人と同じ事情だったとしたら、軽井沢駅に着いてから、改札でもう一度列に並ばされることになるわけです。

 もちろん私も、今回の一件は甚大な気象災害が引き起こした特別な事例だということを、十分理解しています。べつに、JRの対応が悪いことを述べたいのではありません。むしろ焦点をあてたいのは、日本の複雑な仕組みの上に成立しているインフラを利用する際、何かあったときに外国人は途方にくれてしまうという現実です。

 これはオーバーツーリズム(観光客が引き起こす観光地の深刻な混雑)の問題に通じているといってもいいかもしれません。台風19号に関する報道では、閉店している百貨店の前で外国人旅行客が、どれほどの災害が近づいているのかという情報を得られずに、途方にくれている姿が映し出されていました。とはいえ、様々な国からたくさんの外国人が訪日する中で、こうした個別の事象への対応にはどうしても「難しさ」があるわけです。

外国でお金をロスすることと
「おもてなし」の欠如は違う

 私自身、英語も通じない外国に出張する際には、「切符が使えない」「予約したけれど相手が来ない」「買ったものが間違っていた」など、金額面での一定のロスが発生することは最終的に仕方ないと思いながら行動しています。ただ、今回目撃されたような「ちょっと質問したいだけなのに、1時間も列に並ばなければいけない」といったことは、それとは少し違う問題にも思えます。

 難しいけれども、これから増加する訪日外国人観光客への「おもてなし」を考えるにつけ、こうした事態は何とかできないものか――。そんなことも考えながら、台風の後に起きたこの小さな出来事が、心から離れないのです。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)