厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2017年)では、20歳以上の平均睡眠時間は6時間未満が約4割もいて、「睡眠で十分な休養がとれていない」と答える人が増え続けている。

 子どもの睡眠不足をもたらす第二の事情は、子どもの生活が塾や習い事や部活動などで、幼いころから予定がびっしり詰まっていることだ。

 しかも最近は、スマートフォン(スマホ)やSNS(LINE・ツイッター・インスタグラム)、ゲームなど、子どもを夜更かしに誘う要因が増えた。

 保護者が睡眠の重要さを知らず、無関心であることも大きい。

 子どもたちの現状を心配した文部科学省は2006年度から「早寝早起き朝ごはん運動」を推進している。

 子どものすこやかな成長には、適切な運動・調和のとれた食事・十分な休養と睡眠が大切だとの考えのもとに、各地の自治体や学校が啓発活動をしている。

スマホや夜のコンビニ
利用多いほど睡眠短い

 自治体の取り組みで注目されているのが、「子育て世帯が住み続けたいと思う街」をめざしている大阪市淀川区の「子どもの睡眠習慣改善支援事業」だ。

「ヨド川区の子どもは夜ネル、よくネル!」から4文字をとって「ヨドネル」と呼んでいる。

 きっかけは、榊正文・前区長が、子どもの生活習慣の乱れと睡眠の関わりを取り上げたテレビ番組を見たことだ。保護者らとの会議で、区内の子どもの睡眠習慣も乱れていることを知り、「不規則な生活の改善が、学力アップにもつながっていくのではないかと考えた」

 取り組みの特徴は、科学的根拠を明らかにしてまず保護者の意識を変えようとした点にある。

 具体的には大阪市立大学と連携し、水野敬・同大学大学院医学研究科特任准教授の指導を受けた。

 水野特任准教授は抗疲労研究が専門の脳研究者で、同大学健康科学イノベーションセンター副所長を務めている。

 まず実施したのは、区内の小学4年~中学2年生の合計約5300人を対象にした詳細なアンケートだ。2016年と17年の各6~7月の2回行われた。

 その結果、次のようなことが明らかになった。

 回答した児童生徒の約4割が「疲れている」「とても疲れている」と回答し、約1割は疲れが3ヵ月以上続く「慢性疲労」だった。

 疲れを感じている子どもほど睡眠時間が短いことも分かった。