なぜ、年金と医療費のために毎年、
一般会計から二十数兆円も拠出されているのか?

最新のデータを眺めてみて、<br />「変だな」と思ったことは、<br />とことん自分の頭で考えてみる小宮一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント 株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行に入行。84年から2年間米国ダートマス大学経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。著書に『ドラッカーが『マネジメント』でいちばん伝えたかったこと。』『社長の教科書』『経営者の教科書』(ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(東洋経済新報社)他、140冊以上がある。

 もう少し、いろいろなデータをあわせて考えを深めてみましょう。

 先進国で日本に次いで財政赤字が大きいのはイタリアですが、債務残高はGDPのおよそ130%です。

 この数字の意味を考えると、日本というのは異常といっていいほど、財政赤字が大きいのだということも分かりますね。

 となれば、消費税などによる増税が避けがたいことだというのも理解できます。

 また、現在28%程度の高齢化率が今後ますます上昇することを考えれば、財政がひっ迫していることと相まって、このままでは社会保障制度が立ち行かなくなるのではないかということも容易に想像できるわけです。

 せっかくですから、社会保障の話も少し具体的なデータから読み解いてみましょう。

 2019年度の予算総額は約101兆円で、その中で最も大きな割合を占めるのは社会保障費です。実に34兆円にも上っているのですが、みなさんはこの数字を見て「不思議だな」と思いませんか?

 私たちは、毎月、税金とは関係ないところで公的な年金保険料や健康保険料などの社会保険料を払っています。それに、年金についていえばGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がみなさんの年金積立金を預かっていて、それは今160兆円ほどあります。

 それなのに、年金と医療費のために一般会計からそれぞれ十数兆円も拠出されているのはおかしいと思いませんか?

 結論を言ってしまうと、「社会保険料だけでは社会保障が成り立たない」からこのような事態になっているのです。

 ここで挙げた数字が、そのことをはっきりと示しています。