風間俊介が42歳になった――。中学2年生からはじまった、その28年のキャリアの長さを感じさせないほどに、今もフレッシュな出で立ち。先輩にも可愛がられ、後輩にも慕われ、どんな場所でもその場にあった振る舞いをしているのも印象的だ。最近は7年目を迎えた情報番組のMCに、俳優としては大河ドラマに7月期の月9、さらには主演映画も公開中……と多忙な日々を送り、仕事面においても成熟した、理想の40代を送っているように見える。
最新主演作となる連続ドラマ「40までにしたい10のこと」では、“40までにしたい10のことリスト”を作る39歳の枯れた上司・十条雀を演じる。リストを庄司浩平演じる部下・田中慶司に見られてしまったことから、リストの内容を一緒に叶えていくという物語で、その姿はいわば“かわいいおじさん”で見事にハマっている。
最近の風間の中にはビジネスマンにもヒントになる“年の重ね方”があるのではないか――。そう考え、風間俊介にインタビューを散行。失礼な質問であることは重々承知しながら、まずは現在の自分自身をどう捉えているのかから聞いた。(インタビュー・構成/霜田明寛)

「自分はおじさんだ」42歳・風間俊介が年下と接する時に気をつけていること【©マミタ・libre/「40までにしたい10のこと」製作委員会】

42歳・風間俊介は“おじさん”か?

――“かわいいおじさん”を演じられた風間さんですが、現在のご自身はおじさんなのかどうか、自認をお聞かせ頂けますでしょうか?

風間俊介氏(以下、風間):自分のことは「おじさんだと思うようにしている」というのが正しいかもしれません。30代の後半の頃から、元日本テレビの桝太一アナウンサーと「もう私たちはおじさんだと思わないとダメなんだ」と話していて。もちろん、挑戦心を枯らさないという意味では「自分はまだまだだ」と思っていていい。でも、対外的に人と触れ合うときには「自分はもうおじさんだ」と思うほうがいいような気がしています。一方で、もし「そんなことないですよ」と言ってくださる方がいたら、その優しさを貪りながら生きていこうとは思っています(笑)。

ただ、基本的にはおじさんかどうかというのは、関係性によって変わるものだと思っているんですよね。ティーンエイジャーから見たら、20代後半も、もうおじさんかもしれないし、極端な話、赤ちゃんから見たら高校生だっておじさんかもしれません。おじさんかどうかというのは出会う人たちによって変わってしまうものだから、いつでもおじさんになりうるし、逆に、いつでも若者になれると思って生きています。

だからこそ、我々世代は難しいとも言えます。アラフォーである我々は、上の世代から見れば若造だし、下の世代から見ればおじさんです。これは理解しておくと便利で、だからこそ僕は諸先輩方が多くいる現場では「私なんてまだまだ若造でございます」という振る舞いをし、逆に10代や20代の多い現場では、自分を「おじさんだ」ときちんと自覚するようにしています。これを“ブレる”と批判する人もいるかもしれません。でも、僕は、これを“しなる”と表現しています。環境に合わせて、しなっていく。不惑の40なんて言いますが、自分が何かを一方的に決めてそれが通ってしまうようだったら、まずは自分の傲慢さを疑ったほうがいい。特に30代・40代は思いっきり“しなる”ことが美学なんじゃないかと思います。

「他者をいじる時代は終わった」

環境に合わせて“しなる”ことを心がけているという風間。この取材に先立って行われた、ドラマ発表イベントでも、25歳の俳優・庄司浩平と、同世代の友人のように和気あいあいと、それでいながらときに、90年代のカルチャーの話をしながら、庄司が知らないことを確認して場を盛り上げるなど、絶妙な采配でトークを繰り広げていた。ドラマ自体も世代差のある2人の物語でもある。風間自身が、年下と接するときに気をつけていることはあるのだろうか。

40までにしたいことドラマ「40までにしたいこと」の記者会見で共演した17歳下の俳優・庄司浩平と談笑する風間俊介【©マミタ・libre/「40までにしたい10のこと」製作委員会】

――風間さんが、年下の方と接するときに気をつけていることがあれば教えてください。

風間:ジェネレーションギャップで遊ぶことはあっていい。でも、うちらの時代のルールを当てはめて押し付けることはしないようにしています。他者をいじる時代は終わったんだと思うんです。自分を題材にして喋るのはアリです。それを“自虐”と捉えられる瞬間はありますが、自分のことも大事にしてあげればいい。多様性の時代とも言われますが、本当の多様性とは“許容してあげる”ことだと思うんです。もし仮に、自分が社会的には正しくないとされるような精神性を持っていたとしても、それを許容してあげること。常識の範疇ではないところからイノベーションは起きると思っています。さっき言っていたことと、次の日に意見が変わっても、その自分を許容してあげればいい。その意味でも“しなる”自分を許容する心は必要かなと思います。

他者の視線は気にしないが、伝え方には気をつける

ドラマ『40までにしたい10のこと』で風間が演じる雀は、自分の好きなものを大切にするという意味で、自分を許容し、大事にしているキャラクターだ。だが、アラフォー世代の男性が好きなものに邁進するのは、他者の目などを気にすると難しいことのようにも思える。

――雀も風間さんも、ご自身が好きなものを大事にして歳を重ねているように見えます。そう生きるコツのようなものはありますか?

風間:雀も幼い頃から、かわいいものが好きだったんじゃないかと思うんです。そして、雀だけじゃなく、全員に子ども時代があって、小さいときに好きだったものがあるはずです。でも、それを大人になると捨てていくじゃないですか。本当にいらないんだったらそれでいいです。でも、「もう◯歳だから」とか、年齢のせいにして捨てるのはもったいない。感受性がとんでもなく豊かだったあの頃に好きになったものを、対外的な視線を気にして諦めることはしなくていいと思います。大人になっても、かわいいものが好きな自分を否定せず、あの頃の自分を愛でてあげると、雀のようにかわいさが出てくると思います。

ただ、僕は別に「人がどう言うかなんて知らない!自分は自分!」と声高に叫びたいわけではありません。それは、心の中で思っていればよくて、他者がどう思うかも大事です。そこはセパレートして考えたほうがいいと思います。例えば、僕はディズニーが今でも好きです。「その年でディズニー好きなんて」と誰に何と言われようが、好きなものは好きです。じゃあ、それを伝えるアウトプットの仕方をどうするか、大人でも許容できるような伝え方をしよう、というふうに考えるようにしています。セパレートという意味では、「ここは老けちゃいけない」と思っている精神性の部分と「ここは達観していこう」と思う部分も分けるようにはしていますね。

「“なりたい自分”はいらない」 風間俊介の“目指さない”人生

老けちゃけいけない部分と、老成していく部分を分けて考えていく――。13歳から芸能活動を始めた風間だが、かつて所属した事務所では、当時は「20歳を過ぎるとデビューできない」とも言われていた。一般の10代に比べて、より年齢に敏感になってもいい環境だったとも言えるが、年を重ねることへの恐怖はなかったのだろうか。

――ジュニアとしてデビューを目指されていた10代の頃に、年齢を重ねることへの焦りや恐怖はありましたか?

風間:実は、みんながデビューを目指していると気づいたのが、10代後半から20代前半にかけてだったんです。その頃「もうグループアイドルとしてのデビューは難しいんじゃないか」という空気感を感じました。いきなり慰められたりすることもありましたね。僕自身は全く傷ついてなかったのに(笑)。

そこに周りとびっくりするほどのズレを感じて、それが一番の恐怖でしたね。「僕自身はみんなと楽しく野球がやれればいいと思っていたのに、みんなは甲子園を目指してたの!?」みたいな感じです。それくらい楽しくやれていたという意味でもあるんですけどね。

僕は、目標を立てて生きていないんです。“なりたい自分”みたいなものや、ライフプランにおける目標はいらないって思いますね。“目指す”ということをせずにきた人生なんです。「じゃあなんで今そこにいるの?」とツッコミは入るかもしれませんが(笑)。

もちろん自分の意志はあるが、そこに固執はしない。他者の求めるものや環境にあわせて、柔軟に“しなる”。思考も、行動も、対人関係も……30年近く“しなって”きた先の到達点に、今の風間俊介はいるのかもしれない。

インタビューアー
霜田 明寛(しもだ・あきひろ)

1985年生まれ・東京都出身。国立東京学芸大学附属高校を経て早稲田大学商学部卒業。

エンターテインメントWEBマガジン『チェリー』の編集長として多くの俳優・映画監督にインタビューし、劇場試写会やタレントイベントのMCなども務める。

2009年より3冊の就活・キャリア関連の本を執筆後、タレントの仕事術をまとめた『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書・2019)が3万部突破のロングセラーとなり、今も版を重ねている。最新刊は『夢物語は終わらない ~影と光の〝ジャニーズ〟論~』(文藝春秋・2024)。