製造業は景況感が悪化
一方、非製造業は堅調
製造業と非製造業の経済活動や景況感がかい離する状態が続いている。企業の景況感を示す日本銀行の「短観」の業況判断DIを見ると、製造業のDIは、中小企業を含む全規模ベースで、2017年12月調査でプラス19まで上昇していたが、その後低下基調となり、19年9月調査ではマイナス1まで低下している(図1上段点線参照)。
業況判断DIは、景気が「良い」とする企業の比率から「悪い」とする企業の比率を差し引いたもの。業況判断DIがマイナスであることは、景気が「悪い」とする企業が相対的に多いことになり、「不況」とも判断される。こうした状況は、12年の景気後退後の回復期に当たる13年9月調査以来となる(同)。
一方、非製造業の業況判断DIは、同じく全規模ベースで見ると、18年3月調査以降、ほぼ横ばいで推移。19年9月調査でもプラス14と、景気が「良い」とする企業が、依然として「悪い」とする企業を大幅に上回っている(図1上段実線参照)。
製造業の景況感の悪化は、世界経済の減速に伴う輸出や生産活動、企業収益の弱含みによりもたらされたといえるが、輸出が落ち込む一方、国内需要(内需)は堅調である(図1下段)。こうした中、非製造業の景況感は底堅く推移し、製造業と非製造業の景況感は対照的な動きになっている。
経済全体の成長ペースを見ると、18年10-12月期は、前期比年率でプラス1.8%、19年1-3月期が同プラス2.2%、4-6月期は同プラス1.3%となっており、輸出や生産、製造業が不調だが、内需や非製造業の活動が堅調で、経済全体の成長が保たれている格好になっている。
過去を見ると、輸出や生産活動、製造業部門の落ち込みがその他に波及し、経済全体が弱含むのが景気悪化の典型的なパターンだったが、今回は製造業の不調と非製造業の好調の並走が比較的長く続いている。政府の景気判断を示す月例経済報告でも、政府は10月に「輸出を中心に弱さが長引いている」との判断を示しつつ、全体としては、「緩やかに回復している」との見方を維持している。