あの意思決定の裏にも「直観」があった
問題を整理し、筋道立てて考えるロジカルシンキング(論理的思考法)においては、このようなショートカットは禁じ手とされています。
例えば、企業が新しい事業に投資する場合、投下した資金が一定の期限内に回収できるかどうかを徹底的に計算して意思決定するのが普通です。他の投資案件と比較したうえで、投資回収に影響する要因を考えられるだけ抽出して並べ、それぞれ分解して、要因間にどのような相互関係や因果関係があるのか分析し、比較・選択するロジカルなアプローチをとります。
今後の大きな方向性を決めるような投資の場合、こうしたプロセスそのものに意味があるので、どこか一部を端折ることはできない。そう一般的には考えられています。しかし、実際はどうかというと、そうでないケースが意外に多くあります。
かつて世界の民間航空機業界をほぼ独占するほどの大成功をボーイング社にもたらしたジャンボジェット、ボーイング747の開発投資がその最たる例の1つです。
当時のビル・アレン社長は後に、「食うときも、呼吸するときも、眠るときも、飛行機のことを考えていろ」という精神で投資を決断し開発を成功させたと述べています。実際、役員の一人が投資回収の根拠を尋ねても、相手にされなかったそうです。
会社の存亡を左右するほどの重大な意思決定が、論理的な分析をショートカットし、厳密な計画もなしに実行されたとすれば、驚きを禁じ得ません。しかし往々にして、歴史的経営者の予想外の成功は、そうした大胆な思考と行動によってもたらされてきました。彼らは一様に「直観」を根拠に挙げます。