中国きってのレディースアパレルが赤字に苦しむ中、メンズブランドには明るい兆しがある。ようやく中国人男性もファッションに目覚めてきたのだ。売り場には黒や紺中心の「伝統的な紳士服」ではなく、ノーネクタイで楽しめる、軽くて明るめの色合いの商品が並んでいる。(ジャーナリスト 姫田小夏)

レディースアパレル不振も
メンズ市場に成長の期待?

「アイヴィディック」の店舗9月の売り上げは久光百貨のメンズフロア全体で2位になった「アイヴィディック」 Photo by Konatsu Himeda(以下同)

 中国きってのレディースアパレルが半年で5億元(約75億円)の赤字を出し、2470店を閉店――10月半ば、上海でもそんな景気の悪いニュースが流れた。中国では何をやっても儲からない、とため息をつく業界関係者は少なくない。日本でもアパレルは販売不振にあえぐが、中国でも同じだ。

 だが、青色吐息の状況を打ち破る動きがある。それがメンズアパレルだ。上海久光百貨は、感度の高い売り場づくりで定評があるが、5階のメンズアパレルの売り場では“地殻変動”のような動きが出始めていた。ついに中国の男性もファッションに目覚めたようだ。

 振り返れば、上海の女性がおしゃれを意識するようになったのは、今からちょうど20年前だった。1999年の建国50年を前後して、上海はショッピングモールの建設ラッシュに沸き、2000年代に入ると、市内のいたるところでブランドショップが店を構えた。外資企業の上海進出が盛隆を極める中、外国人と共に働くことでおしゃれを覚えた女性が最新モードを求め始めたのが、この頃である。

 今年、建国70年の国慶節を迎えた上海では、20歳の男性による「一度に13着、合計2万元(約30万円)を超える買い物」が、上海の業界人の間でちょっとした話題になった。残暑厳しい9月の売上げとしては非常に稀な数字であったこと、それがネット販売に押される実態店舗での販売であったこと、さらにそれが国産ブランドだったということが、メンズアパレル業界に自信を与えたのだ。レディースの開花から遅れること20年、メンズ市場が本格的な幕開けを迎えた。

 中国では多くの新興ブランドが芽を出し始めている。その1つ「ICICLE(アイシクル)」は、苦節20年で一世を風靡するブランドに成長した。もともと「アイシクル」はレディースブランドだが、厳しい競争で生き残ったその実力で、メンズ市場への参入を果たした。久光百貨だけで年間約2000万元(約3億円)の売り上げを叩き出すといい、すでに中国全土で260店舗を展開中だ。