「留学」という選択肢にも
費用の問題が立ち塞がる

 フユコさんは英語民間試験の導入について、「業者との癒着?」と思っていたという。

「なぜ国の責任で試験を実施しないのか、理解に苦しみます。入試で課されるいくつかの教科のうち1教科をクリアするのに、別途費用が必要になるのですよね?無料か、せめて数千円くらいにすべきだと思います。その上、地域格差や経済格差などハードルが高くなるものを、なぜ? 疑問しかありません」

 低収入であることの多いシングルマザーにとっては、費用だけで充分に深刻な打撃だ。フユコさんはさらに、「保育園の運営を株式会社に委託するのと同じように、子どもを単に消費者と捉えているのでしょうか?」と指摘する。

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 フユコさんが子どもの大学進学に際して期待しているのは、大学での教育内容に加えて、コミュニケーション力やサバイバル力を身に付けることだ。そのためには、日本の大学受験のストレスによって消耗することは、むしろマイナスかもしれない。フユコさんは「子どもを伸び伸びと過ごさせたい」と考え、親子は「台湾への留学」という選択をした。

 とはいえ、経済的に余裕があったわけではない。それなりのレベルが要求される英語と中国語については、私塾の好意でハイレベルな指導を受けることができたそうだ。幸い、子どもは希望通りに合格し、日本にはない環境に刺激を受けながら、充実した学生生活を送っている。

 費用は、日本の国立大学に自宅外通学する場合と同等、またはそれ以下だ。学費は低く抑えられており、生活コストも日本ほど高くない。しかし、「留学」という選択肢は、進学費用が問題になる多くの家庭にとって、現実の選択肢にはなり得ないだろう。

 様々な懸念に思いを巡らせながら、まずは衆院での審議の成り行きに注目を続けたい。

(フリーランス・ライター みわよしこ)