「反対する両親に『それでも結婚する』というと、『そこまで意志が固いなら仕方ない』と両親は折れてくれた。代わりに『その男性を連れて来い』と呼び出して、『今後FXや株などの金融取引は一切しないことを誓ってほしい』と、夫に一筆書かせた。夫は借金の件で心底恐縮しきっていたので是非もなかった。

 借金を2人で返していくことに最初夫は反対していたが、『現実的にそれが終わらないと家の購入も子育てもままならないのだから仕方ないでしょ』と叱ると夫は沈黙。『申し訳ない』と何度もわびつつ、2人で返済していくことを約束した。

 夫の借金は平凡な生活を送ってきていた私からすると目が回るような額だったが、今後の幸せな未来のために避けては通れない問題。借金返済という目的を共有して、一致団結できたと思う」(Bさん)

 金融取引で扱われるお金はしばしば非現実的な手ごたえを持っているから、分を超えた借金を作ってしまう投資家・投機家は多かろう。投資・投機中は金銭感覚がマヒしがちである、と言い換えることもできる。

 金融取引によって失われた金銭感覚でBさん夫は大きな借金を背負うことになったが、おそらく普段の金銭感覚はBさんと夫でそこまで食い違いがなかったであろうことは幸いであった。

「妻が怖い」「義務を果たしたらあとは自由」
その他、うまくいっているケース

 共通の目的があれば金銭感覚の齟齬を克服しやすい、と考えられるエピソードを紹介したが、うまくいかせるためには必ずしも共通の目的が必要なわけではない。そのほかの可能性を紹介したい。

 Cさん(40歳男性)はいかつい性格で各方面とバトルしながらキャリアを築いてきた。Cさんを知る人物は「Cさんは怖い」「豪快な野武士」「迫力がある」「押しが強い」と評するが、Cさんは唯一妻に頭が上がらなかった。絵に描いたような「かかあ天下」であった。

「妻はほんと、怒らせると怖いので…。自分がこれまで生きてきて出会った中で、怒らせると一番、断トツで怖い人物」(Cさん)

 Cさんは怖がられがちだが人望は厚く、その理由として気前の良さが挙げられる。下の人間を連れてよく飲みにいきたがった。払いはもちろんCさんである。

 Cさん家は小遣い制であり、夫の「おごりたがり」を承知している妻はやや多めの小遣いを渡していたが、小遣いとは得てして足りなくなるものである。Cさんが「どうしても…」と追加の融資をお願いし、妻のカミナリがさく裂する…というのを結婚後十年近くにわたって繰り返してきた。

「妻に言わせると『あんたは金銭感覚がおかしい』ということらしいが、こっちだって入り用なのだから仕方がない。

 仕方がないのだが、もっと仕方がないことに妻は怖い。怖い妻には従うしかない」

 妻を恐れつつ従うCさんには、浪費を抑制してくれる妻の存在を無意識下でありがたく思っている部分も、ひょっとしたらあるのかもしれない。