個人情報を企業が抱え込むことで
経済成長が阻害されている

――それはビジネスでも同じですよね。

 現在は、個人データは取得した企業が抱え込んでしまっていて、流通させることは想定されていません。そのため、豊富な資金を使ってサービスを展開し、その対価の形でより多くのデータを獲得できているGAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)がビジネス上の絶対的な優位を獲得しています。その独占性に先進各国が規制をかけようとしているのが現状だということは、みなさんもご存じの通りです。

 個人情報は本来、個人のものです。GAFAの巨額な利益の源泉も、突き詰めていけば個人の情報なのですが、その個人は管理もできなければ利益還元もない。企業が抱え込んでいる自分の情報が正しいのかどうかも、確かめるには手間も時間もかかるのです。

 こうしたデータが個人が主体となって流通されるようになると、ビジネスも社会も大きく変わります。

 引っ越しをして住所変更したといった単純なデータですら、保有している企業は限られます。これが共有ができればメリットが大きいはずです。しかし、データを持っている企業には、他社と共有するメリットが見えていません。

 個人データを使った新規事業をスタートさせたい新興企業にとっては、個人データを利用するには既存の企業との協業か、あるいはデータに利用料を払うしかないのですが、データを保有している企業は、取得時に示した目的外のデータ利用には個人を特定できないように加工せねばなりません。斬新なサービスを発案した人がいても、個人データが利用できないばかりに育てることができないのです。

 また、ポイントカードの発行などで企業が競って集めている購買履歴のデータも、その真正性は改善の余地があります。たとえばある人が玩具のフィギュアを買ったとします。購買データからは、その人がフィギュアのコレクターなのか、子育て中の親なのかは分かりません。マーケティングに利用するならば、その人に効くプロモーションがコレクター向けなのか、子育て関連なのかは、本人に確認せねばならないのです。それだけでも、企業が自ら収集した情報であるにもかかわらずズレたものになってしまうのですが、これを(個人の許可が取れているという前提で)外の企業に提供しようとする場合には、真正性についての保証ができなくなってしまいます。

 住宅ローン審査など個人の信用調査は、結局は働いている企業の安定性と年収が判断材料になっています。それしか判断材料が手に入らないからなのですが、同じ企業で働いていても、資産の保有状況や世帯全体の収入、過去のローン利用実績、要介護者がいるかどうかなどで信用力は大きく変わるはずです。これから、兼業、副業がさらに盛んになっていくといわれています。そもそも企業という枠組み自体が、当てはめづらくなっていくのではないでしょうか。

 各金融機関の利用状況や納税記録など、バラバラに存在する個人情報を集めていくことで、個人情報はより正確なものになっていくのです。

情報銀行は日本発の仕組み

 さらにそうした個人情報流通の前提となる環境にも課題があります。データを保有している企業がルールで定められた範囲で第三者の利用に供しても、悪評が広まる事例が出てきています。データを保有する企業は、広く社会のためにデータを活用しようにも、できにくい状況なのです。

 情報銀行は、そうした状況を解決するための、日本人が考案したアイデアです。

 個人情報は「21世紀の石油」です。先進各国が中心となって、個人情報の公正な利用のためのルール作りに取り組んでいます。情報管理の主体を企業から個人に移し、個人のコントロールの下で情報を流通させるという制度改革の考え方は各国共通しています。欧米では、その管理権限を個人にゆだね、その透明性の下で各企業が利用するという考えなのですが、その情報の管理者となる独立した第三者を作るというアイデアが情報銀行なのです。個人が自らの判断の上で情報を銀行に預け、銀行はそれを管理・運用して利益を個人に返す。まさしく銀行の仕組みそのものです。