共感が得られれば、お客様が買う前にライバルと差がつけられる

 近年、サービスに科学的アプローチを適用して、体系化し、科学的、工学的な評価、分析を行なう「サービスサイエンス」が注目されるようになっています。サービスサイエンスの目的は、サービスを科学的にとらえることだけでなく、実際のビジネスで効率よく、付加価値の高いサービスをお客様に提供していくことにあります。

 筆者は、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント:顧客関係性管理)のビジネスに携わっていた時代からこの新しい概念に興味を持ち、検証を試みてきました。モノやサービスの成功の鍵は、お客様の満足度にあり、そのお客様の満足度はお客様の事前の期待値にどこまで応えることができたのかという達成度で決まると考えています。

 サービスサイエンスの世界では、感動するサービスの提供には6つのサービス品質(正確性、迅速性、柔軟性、共感性、安心感、好印象)のうち、特に共感性が大切だと考えられています。それは、お客様の事前の期待に応えるためには感受性や傾聴力、観察力といった共感性の発揮が最も有効だからです。

 その一方で、お客様は企業や店舗など、サービス提供者の気づかいや思いやりに「共感」するのです。

 そしてお客様から共感を獲得するための方法として、ソーシャルメディアの活用は非常に有効ではないかと考えています。ソーシャルメディアは、リアルの対面販売の場合と同様に双方向でのコミュニケーションが可能であるとともに、リアルの場合以上に親密な会話(というよりも対話のイメージが近い)が可能になるからです。

 ソーシャルメディアを活用してお客様から共感を獲得した企業や商品・サービスは、ライバルと天秤に掛けられているものとは明らかに異なり、お客様との間に深い関係性が構築されます。お客様はその企業や商品・サービスに対して深い愛着を持つとともに、企業はお客様との間で固い絆を獲得することができるのです。

 しかし、ソーシャルメディアを活用すれば誰でも簡単にお客様に共感してもらうことができるのでしょうか? そこにはお客様のことを考えて、もう一歩踏み込んだサービスサイエンスの考え方の取り込みが必要になると考えています。