(3) 経済への関心の維持

 よく高齢の方で株式投資をしている人が「いや、ボケ防止ですよ」と自嘲気味に言うことがあるが、これは案外当たっている。いや、むしろボケ防止というよりも、もう少し積極的に考えた方がいい。株式投資というのは単なるマネーゲームではなく、企業価値を正しく評価して行うべきものだ。

 仮に定年後、すべての仕事から引退してのんびり過ごすにしても、常に社会の動向に関心を持ち続けるのは悪いことではなく、明らかに自分で考える力を維持できる良い方法だろう。ましてや定年後も別な形で働くのであれば、経済や産業の動向に注意を払うことは必要である。そのためにも、株式投資を少しでもやるのは良いことだと考える。

(4) 生活資金の補填目的で投資しない

 定年退職者が株式投資をする上で、気をつけるべきことは、前述の(1)と(2)にも関係してくるのだが、投資でお金を増やし、生活資金にしようとすることである。

 よく金融機関などは「これからはお金に働いてもらう時代です」といって投資に誘引しようとしているが、株式投資での利益を、生活資金や老後資金の足しにしようと考えるのはやめた方がいい。お金を働かせる前に自分で働くべきなのだ。そもそも投資の結果は不確実である。そんな不確実なものに生活資金を委ねるというのは危険だ。昨今は「年金2000万円問題」が大きく話題になったこともあって、余計に投資でお金を増やそうとする人が増えてきているようだが、筆者は老後資金が足りるとか足りないという問題よりも、自分の実態を正確に把握しないまま、あおられて投資をして損失を被る、いわば二次災害の方を強く懸念している。

 以上、定年退職後の株式投資について、知っておくべき大切なことの基本を並べてみたが、既に投資をしている人から見れば、わかりきったことかもしれない。

 しかしながら、これから株式投資を始めようという人にとって、ぜひ知ってもらいたいこと、それは定年後のライフプランを考える上で、投資は最重要項目ではないということである。

 最も大事なことは「生涯にわたる自分の収支」をしっかりと把握すること。次に、できる限り長く働くこと。そして最後は、無駄な支出をなくして収支を整えることである。投資を考えるのはその次ぐらいでいい。株式投資は、自分の持っている資金のうち、自分で取れるリスクに見合った分だけの金額で行うべきであろう。長期的な上昇相場が始まって、まもなく7年を超える。リーマンショックからは既に10年を経過している。いつ何時、大きな市場の下落に見舞われないとも限らない。特に退職者は、ここからは慎重な姿勢で考えるべきではないだろうか。

(経済コラムニスト 大江英樹)