トップダウンマネジメントが
パワハラの温床

 私はパワハラの温床は、指示・命令だけに終始したトップダウン型マネジメントの行き過ぎにあると考えている。そこで、ボトムアップの巻き込み型のリーダーシップを浸透させるための具体的な行動や話法をその場で習得するプログラムを、企業経営者か管理職向けに実施している。

 そもそもトップダウン型マネジメントではなく、巻き込み型リーダーシップにより生産性を上げるためのプログラムなのだが、そのためにはメンバーのストレス発生を未然防止するという観点から、パワハラ未然防止のために有効なのだ。

 プログラム参加者から、必ずと言っていいほど出される質問が、「トップダウンでメンバーに徹底しなければならないことがあるのに、ボトムアップのリーダーシップを発揮しなければならないのか」というものだ。この質問に対して私は、「トップダウンで徹底したいことは、トップダウンのマネジメントで徹底すればよい」と答えている。

 法律を順守する、コンプライアンスを徹底する、安全を確保する…メンバーが何と言おうと、やってもらわなければならないことは、トップダウンで徹底すればよい。問題は、トップダウンでやらなくてもよいことまで、トップダウンでしてしまうことだ。それが、メンバーに無用なストレスを与え、ひいてはパワハラに至ってしまう。

 トップダウンでやらなくてよいことは、ボトムアップの巻き込み型のリーダーシップで対応する。これだけで、間違いなくパワハラは防止できる。それだけでなく、生産性も上がるのだ。

 トップダウンかボトムアップかの使い分けはどうするべきだろうか?まず言えるのは、トップダウンのマネジメントで成果が出続けているのであれば、それを継続することだ。しかし、成果に陰りが見えてきたら、すぐにボトムアップのリーダーシップに切り替えるとよい。成果が上がらない場合、「成果を出せ」「徹底しろ」「取り組みを加速しろ」とトップダウンを重ねると、成果が上がったとしてもそれは一時的で、低下傾向に陥ることがほとんどだからだ。