ボトムアップのリーダーシップを
瞬時に出せる訓練が必要

 もちろん、ボトムアップが必要だということを頭ではわかっていても、ボトムアップのリーダーシップの具体的な行動や話法を使えなければ意味がない。パワハラ事件で、「自分はそのようなつもりはなかった」と答える人の大半は、このケースといえる。

 ボトムアップのリーダーシップの具体的な行動や話法は、とっさの場面で、瞬時に、頭で考えなくても、日常のビジネスのさまざまな場面で使えるようになる必要がある。また、せっかくボトムアップの話法を使っていても、まなざしや顔色にトップダウンの威圧的な雰囲気がにじみ出ては効果がない。ボディーランゲージや雰囲気も含めて、ボトムアップのリーダーシップを自然に発揮できるように訓練することは可能である。これで、間違いなく大半のパワハラは未然に防げる。

 そのために、私のプログラムでは、数分間の自撮りロールプレイングを実施し、そのビデオを自分で確認。修正点を見極めて、さらに自撮りロープレを繰り返すという反復演習を実施している。パーツ分解したスキルを反復演習することにより、頭ではなく行動で身に付けて、瞬時に使えるようにしていくのだ。

 そして演習後、実践の場面で、常にボトムアップのリーダーシップを心がけて実践してもらう。日本のビジネスパーソンはトップダウンに慣れすぎている。だから最初は、「ボトムアップに切り替える」と常に意識するくらいで初めて、トップダウンのマネジメントとボトムアップのリーダーシップのバランスがとれる。意識していないと、いつの間にかトップダウンのマネジメント一辺倒になってしまっている幹部が多いのだ。

 パワハラの未然防止のためには、労災認定項目の整理や法規制、ガイドラインに加えて、上司層のスキル訓練が不可欠である。