なぜヒトラーが
ノーベル平和賞候補になったのか

 もしヒトラーが第2次世界大戦前に死んでいたら、「ドイツ史上もっとも偉大な宰相になっていた」と舛添氏は分析する。

「ナチスの正式名称は、『国家社会主義ドイツ労働者党』です。ヒトラーの率いたナチスは右翼政党と思われていますが、政治手法は左翼のポピュリズムそのもの。労働者のための政策を次々と打ち出し、熱烈な支持を受けました」

 第1次世界大戦に敗れたドイツは、国内総生産(GDP)の約20倍に及ぶ賠償金に苦しめられる。そこに1929年のウォール街大暴落に端を発した世界恐慌が重なり、1933年にヒトラーが政権をとる頃には、ドイツ全土に大量の失業者があふれかえっていた。

「ヒトラーはアウトバーンと呼ばれる高速道路などの公共事業を推進し、わずか3年で600万人いた失業者を完全雇用状態にしました。天文学的だったインフレの抑制にも成功し、経済は安定します。今で言う働き方改革も行い、労働時間を8時間に制限し、長期休暇も取得しやすくした。財形貯蓄の制度を整え、大型客船で労働者を海外旅行にも連れていったのです」

 外交でもヒトラーは手腕を発揮する。

「ヒトラーは戦争で失った土地を外交と国民投票で次々と取り戻しました。自信と誇りを回復した国民はさらに熱狂します。そして1938年のミュンヘン会談では、これ以上の領土は求めないと声明を出し、戦争を回避したとノーベル平和賞の候補にもなったんです。もっとも、この声明はイギリス、フランスを欺いたもの。つまり、ヒトラーは約束を守るつもりはなかったのですが」

 着々と積み上げる業績の裏で、ヒトラーは独裁体制の強化と戦争の準備を進め、ユダヤ人や障害者、同性愛者などへの激しい迫害も徹底して行うようになったのだ。