われわれもなるべく、死因を究明するために努力していますが、間に合いません」

 死因といえば近年、急速に増えている死因がある。「老衰」だ。

 厚生労働省の人口動態統計によると、国内で2018年に亡くなった人のうち、「老衰」による死者数が約11万人となり、脳梗塞(こうそく)などの「脳血管疾患」を抜いて死因の3位になった。老衰はほかに死亡の原因がない、いわゆる「自然死」ととらえられる。

「老衰は病名ではありませんが、死亡診断書に書くことはできます。患者さんの人生のストーリーを含めた経過から判断する死因なので、われわれのように、患者さんと初めて会う医師には分かりようがない。かかりつけ医ならではの病名です」

 老衰は、戦後の1947年をピークに減少傾向だったが、2001年以降は増加に転じている。年代別にみると、老衰による死亡の割合は高齢になるにつれて高まり、95歳以上では死因の1位になっており、『大往生』といわれるような死に方が増えてきている。

 日本老年医学会理事長の秋下雅弘・東京大教授(老年病学)は、朝日新聞(2019年7月13日)で、「亡くなる場所が病院から自宅や施設へと徐々に移行し、心肺蘇生や人工栄養などの延命措置を望む人が減っていることも関係しているだろう。本人や家族が納得できる穏やかな最期を迎えられるよう、医療や介護の環境をさらに整えていく必要がある」と述べている。

自分らしい死に方を
地域ぐるみでかなえる動き

 現状では、蘇生処置を行ってほしくないならば、119番通報をしないことがベストだが、状況は変わりつつある。

 朝日新聞の調査によると、119番通報で駆けつけたにもかかわらず家族から蘇生中止を求められた場合、都市部の消防本部の25%が条件つきで中止を容認していることが分かった。蘇生拒否への対応は地域によって異なり、方針を決めているのは39本部(75%)。26本部は家族に説明や説得をして蘇生する方針だが、広島や長崎など13本部(25%)はかかりつけ医に指示を受けることなどを条件に中止を認めている(2019年6月25日)。

 一方で、全国統一の方針策定に向けた動きは日本臨床救急医学会の提言を受けて2017年から始まっているが、総務省消防庁は今年、「地域によって事情が異なるため、統一方針策定は困難」として、見送りを発表した。