意外かもしれないが、プロ野球の観客動員は年々右肩上がりに伸びている。まずはこの点を押さえておきたい。今シーズンも史上最多を更新し、NPBの発表によれば2653万6962人が球場に詰めかけた。カープ女子を思い浮べる人も多いと思うが、実は2000年代からパリーグを中心にファンビジネスに力を入れる流れが加速したのが契機である。他にもプロ以外でいえば、夏の甲子園の観客数が過去最高を記録したのも、つい昨年の100回記念大会だ。野球人気をたしかに示すかのような数字を見つけるのは案外難しくない。

野球の「マイナー化」
野球界の構造的な問題とは

 ここで大事なのが、野球を「する」人と「見る」人にきっちり分けて考えること。すると浮かび上がるのが、野球を「する」人口の減少だ。何も手を打たなければ、将来的には「見る」も先細りするのは間違いない。根深い問題である。

 地域によって差はあれど、野球ファンの平均年齢と言われる40代が子どもだった頃は、ボール遊びができる場所がまだまだ身近にあったはずだ。野球部に入っていなくても気軽に「する」経験を積める環境が「見る」層のボリューム増を支えていたことは想像に難くない。カジュアルに「する」機会が減ったいま、野球は部活やクラブチームに所属して「わざわざ」やるものになっている。著者の言葉を借りれば、野球の「習い事化」が進行しているのだ。

 この影響が如実に表れているのが、軟式野球の世界。転換点として挙げられている2010年から2018年までの中学校の男子部員数の変化を見ると、軟式野球については29万人から16万人へと大きく減少した。これは他のスポーツと比較しても速いペースである。小中学生全体の人数が減る中でも、サッカーやバスケ、バレーなどでは減少幅が比較的緩やかだ。

 近年は軟式でも、学校の部活ではなくクラブチームに入る子どもたちが増えた。硬式野球についていえば、競技人口は横ばいで推移している。こうした「習い事化」の進行は、同時に「二極化」も引き起こす。私立の強豪校が何年も連続で県予選を突破し、甲子園でも上位に食い込むケースが増えた背景にもこんな事情がある。二極化は「みる」の面でもキーワードだ。ここ10年ほどでプロ野球中継が地上波からBSやネットの世界へすっかりシフトしたことも、まさに同じ潮流の中にある。一連の流れが示すのは、シンプルにいえば野球の「マイナー化」に他ならない。

 外部環境の変化それ自体は、もちろん野球だけの話ではない。出遅れた背景には何があるのか。著者は野球界の構造的な問題に切り込みながら、その理由を解き明かしていく。最大の原因は、プロ・社会人・大学・高校・少年野球といった分野ごとに運営組織や支援団体が分かれていること。日本サッカー協会のような統一組織が、野球界には存在しない。