もちろん一本化されることのデメリットもあるが、業界一丸となって改革に取り組む上では、身動きが取りづらいため不利になる。少年野球の競技人口減を「たいした問題じゃない」と一笑に付したプロ球団のオーナーの話が書かれているが、同じ課題を共有することすら難しいのが現状なのかもしれない。

 それぞれの世界にどんな問題があるのか、個別の状況はぜひ実際に読んでたしかめてほしい。学童野球の構造のいびつさなど、プロや高校野球と比べて報じられにくい部分にもスポットが当てているのが印象的だ。

 学童野球は全国規模の運営組織が2つあり、加えて地元企業や商店の主催による大会も各地で開催される、まさにバラバラな運営構造になっている。別の「縄張り」の大会には出られなかったり、逆に出たくない試合でも付き合いのために出場しなければならなかったりする。大人の事情に子どもたちが翻弄される様を見て「学童野球こそ、日本野球界の最大の闇」とこぼす指導者も少なくないと著者は書く。

 ルールがわかりにくい、「投げる・捕る・打つ」動きが難しいなど、そもそも野球は初心者からすればとっつきにくい競技である。そこに敬遠される理由を積み増し続けていては、10年後か20年後か、いよいよ手遅れになる時がくるだろう。同じ強豪国でも、韓国では人数比からして圧倒的に「する」より「みる」スポーツとして根付いている。これからは「みる」を伸ばす方向に集中するのも、もはや一手かもしれない。いずれにしても、構造が変わらない限り、どの方向にも思い切って舵を切れないことだけはたしかだ。

「意思ある個人」の行動からしか
変化は始まらない

 野球というフィールドを通して「メジャー」が「マイナー」へと変化していくプロセスを追った一冊ともいえる。その過程で何が起こるのか、どんなところに兆候が出るのか、手を打たないとどのような状況が訪れるのか。読み方しだいでスポーツ以外にも応用できるだろう。それが手に取りやすいコンパクトさでまとめられたことに意味がある。書き手の思い入れが入り込みがちなジャンルでありながら、比較的冷静な視点で書かれているのも貴重だ。

 まずは「意思ある個人」の行動からしか変化は始まらない。著者はそう強調する。限られた資源の中、工夫をこらして結果を出し、旧来の価値観を現場から覆していく指導者の存在には勇気づけられる。本書をひと区切りに、未来を憂うのではなく、作り出そうとする人々にスポットを当てる流れがきてほしい。いまも草野球などで「する」楽しみに触れる一人として、著者が「意思ある個人」の取り組みを一冊にまとめる日が来ることを心待ちにしている。

(HONZ 峰尾健一)