事前に、栗山さんが発達障害の子どもを持つ親198人にヘアカットに関するアンケート調査をしたところ、回答者の約4割が「美容院や理髪店で子どもの髪を切ることができない」、その理由について約5割が「発達障害の特性によるから、そのことによる迷惑を気にした配慮から」と答えた。

 発達障害の子どもには「じっとしていられない(髪を切っているとき、動いてしまう)」「初めての場所や人を極端にこわがる(新しいお店に行けない、知らない人を嫌がる)」「予測できないことが起こるとパニックを起こす、暴れまわる(髪を切る工程がわからない)」という特徴を持つ人がいる。

 さらに、「機械音が苦手(耳回りのハサミやバリカンの音が嫌い)」「においに過敏になる(シャンプー等のにおいが苦手)」などのケースもある。

 栗山さんは、身体・言語・学習・行動等の発達がゆっくりなこうした子どもや大人に親しみを込めて「ゆっくりさん」と名付けた

 そして、ゆっくりさんが安心してヘアサロンを利用できるよう、美容院や理容院にいろいろな配慮(下の写真の図参照)などを依頼し、協力してくれる店をサイトに順次、掲載している。

ゆっくりさんのヘアサロンサーチでは10項目のうち4項目以上の配慮に協力頂ける店を紹介するゆっくりさんのヘアサロンサーチ(詳しくはこちら)では10項目のうち4項目以上の配慮に協力する店を紹介 Photo by Maki Fukuhara

「ヘアサロンの情報は、おもに発達障害の方をカットしたことがあるという口コミで集めています。実際に店長に会ったり電話で話したりなどの方法で、サイトの趣旨やゆっくりさんについてご理解いただいていることを確認してから、お店の情報を載せています」と栗山さんは説明する。

子どもとのコミュニケーションを通して
信頼関係をつくってからヘアカットする

Ameri chou chou店長の藤川京介さん。アンジーさんと呼ばれているAmeri chou chou店長の藤川京介さん。アンジーさんと呼ばれている Photo by M.F. 

 ゆっくりさんのヘアサロンサーチ掲載店の1つで、千葉県柏市のヘアサロン「Ameri chou chou(アメリ・シュ・シュ)」は6年前の開店時から、「大人1人をカットしたら、キッズカットは無料」のサービスをしている。

「縁のない土地で開業したため集客する必要があり、目の前が小学校という土地柄を生かしたサービスを始めました。親と一緒にヘアカットできる店を目指しています」と店長の藤川京介さん(店ではアンジーさん)は話す。これが好評で、多くの客がリピーターになった。

 開業したばかりのころは子どもをカットするとき、嫌がったり泣いたりされると、藤川さんも困って断ったこともあった。だが、スタッフ8人で毎月100~120人ぐらいの子どもをカットしているうちに、いろいろな子どもがいることに気付いた。そのたびにインターネットで調べるようになり、その子どもに合わせた対応を取るようになった。