しかし実際は、ひきこもる人たちの多くが、以前まで長年まじめに働いてきた、まっとうな社会人だった人たちなのです。なのに、中高年になって突然、職を失い、しかも、がんばっても、がんばっても、まともな再就職先をみつけられなかったとしたら……。よほど強靭な精神の持ち主でない限り、心がボロボロに傷ついて外へ出られなくなる可能性は十分に考えられると思います。

 定年まで安心して働ける、日本独特の終身雇用制はすでに崩壊しています。誰もが突然、リストラに遭う可能性がありますし、長期不況のなか、再就職の道も閉ざされがちです。このような状況では、ひきこもりは誰の身にも起こりえますし、中高年のひきこもりは他人事として片づけられるような問題では決してなく、誰もが「自分事」としてとらえ、考える必要のある事象と言えるでしょう。

「中高年ひきこもり」に見られる2つのタイプとは

 失職や病気、大切な人の死などをきっかけに、人は誰しもひきこもりになる可能性があります。そのため、ひきこもりは決して他人事として片づけられる問題ではないのですが、ひきこもる人たちには共通項が見受けられるのも確かです。いったいどのような人たちが、どのような過程を経てひきこもっていくのでしょうか。

 ひきこもりといえば、若年層(15歳~39歳)のものというイメージが一般的でしょう。実際、内閣府はひきこもりの実態を過去に2回、調査していますが、いずれも若年層を対象にしていました。しかし、ひきこもりの長期化や高齢化にともない、どうやら中高年層(40歳~64歳)にもひきこもっている方たちが多くいるようだと考えられるようになりました。そして、内閣府も2018年には中高年を対象にひきこもりの実態調査を実施したのです。

 その結果から、従来の若年層では見られなかった、中高年に特有の「新しいタイプのひきこもり」が浮かびあがってきました。もちろん、新しいタイプのひきこもりの方がいるいっぽうで、従来の若年層と同様のタイプのひきこもりの人たちも見られます。

 まず、「従来のタイプ」は思春期から20代前半における挫折によってひきこもり、そのまま中高年までひきこもっているタイプ。もしくはぶり返し(ひきこもりから抜け出したあとで、再びひきこもってしまうこと)が続いた結果、ひきこもりが固定化したケース。本人の繊細な資質や性格的な傾向、不適切な養育経験、いじめや人間関係トラブルなどによるところが比較的大きいひきこもりを指します。これまで論じられてきたひきこもりの多くは、こちらに相当すると言えるでしょう。