今どきの就活生は
業界の絞り込みが早過ぎる

――近年の就活生に共通する特徴はありますか?

商社 インターンシップの参加が増えている分、エントリーシートから通常応募する数が減っているんじゃないかと感じますね。「4社しか受けていません」なんて学生が普通にいて、「そんな応募数で怖くないの?」って思わず聞いてしまいます。

 それで年明け前にはある程度自分の行きたいところを絞っている学生が多い。私自身について言うと、結構ビビリだったので、良さそうな会社は全部エントリーして実際に行ってみて、選んでいくみたいな感じでした。

金融 ここ数年でいろいろな意味で早期化が進んでいます。夏のインターンシップに参加するのが当たり前になりつつありますし、かなり早期に志望業界を絞っていますね。それって視野を狭めることと同義だと思うのですが、対策本に書いてあるのか、親や大学、サークルの先輩に言われるのか、就職活動は業界を絞らなきゃいけないものだと思い込んでいる。

 それで自分の就活がやりやすくなるんだったらいいんですが、結果的に選択肢を狭めて、自分の首を絞めているだけのような気がします。

メーカー やはり学生も簡単に内定が出て余裕があるので、よく言えば堂々としているし、悪く言えば気が大きくなっていて、もっと気を引き締めた方がいいよとは感じますね。私が就職活動をしたのは5年前で、ちょうど求人倍率が上がり始めて売り手市場が始まった頃でしたが、それでも私は50社エントリーして三十数社には足を運びました。今の学生たちが「10社ぐらいです」というのを聞くと、「大丈夫か」って思いますね。

商社 強気ですよね。やはり今、究極の売り手市場で、学生もそれを理解しているんです。だから自分が思うような就活ができると勘違いしている学生が多い。OB訪問もすごくしやすくなってますし。

 でもそこには落とし穴があります。就活終盤の6月ごろの面接で、「最初に業界を絞り過ぎました。今、いろんな業界を見て就活をやり直しています」みたいな学生が結構来るんですよ。

「採用担当者」覆面座談会、今どきの学生の驚きの就活実態とは

――面接対策などでトークのレベルも上がっていると聞きますが、どんなところを見ていますか。

金融 相当、面接の練習をしたんだろうなというのは分かりますが、そのことが評価に影響することは特段ないですね。立て板に水のようにぶわーっとしゃべる学生がいたら、事前に準備していないであろう質問をして、その場で考えてもらって、自分の言葉でしゃべってもらうようにします。

メーカー 当社の評価基準には、グローバルとか、コミュニケーション力とか、広い視野を持っているかとか、幾つかのキーワードはあるのですが、実際に私が見ているのは、人としての魅力みたいなものですね。

「この人と働きたいな」と思えるかどうか。それって言葉では言い表しにくいですけど、対策本で学べることではない。私はそういう本なんか読まないで来てほしいなと思います。「人対人」の会話の延長が面接だと思うので。

商社 当社では志望動機は聞かないです。だいたいみんな準備した回答を上手に話してくれるので。ですから、とにかく質問でその学生の人生をひもとくということに力を入れていますね。子どもの頃の話や、家族の話、友達の話とか。そういう周囲と関わりながら、人生の中で、一つ一つの人生の選択を自分でしてきたかどうか。そこを見ています。

 私たちの事業は自分で決断しないといけないときがある。決断の結果が良くても悪くても、反省すればいいんです。ただ、決断できない人というのは厳しい。「親に勧められたので」という回答はマイナスです。