新情報の減ってきた今が掲載のチャンス!?

石谷 ところで、これ、どうぞ。

ちきりん 『地球の歩き方の30年史』って、すごい。こんなのがあるんですね。昔の表紙、なつかしいです。ありがとうございます!

ちきりんさんも「地球の歩き方」のライターだった!?『地球の歩き方30年史』(非売品)

石谷 この初期の時代に投稿されていた?

ちきりん はい。ところで、初期の頃は、投稿などの情報提供がいっぱいあったじゃないですか。その傾向は変わらないのですか?

石谷 少なくなってますね。傾向としては新情報が少なくなって、多くが確認情報なんですね。

ちきりん 「新しいレストランを発見した!」といった情報が減って、「載っていたこのレストランは美味しかった」とか、「このショップの商品は値段が変わってましたよ」といった情報が多くなってるってことですね。

石谷 はい。

ちきりん 初期の頃は旅行者もバックパッカーだから、新しいお店を見つけること自体が楽しかったんですよね。「この町は、こうめぐると面白い」とか、「このホテルは穴場、お勧め!」とか、自分しか知らない情報を本に載せて欲しかったんだと思います。国としては、やはり発展途上国のほうが新情報は多いんですか?

石谷 逆ですね。

ちきりん え、逆なんですか?

石谷 はい。ニューヨークとかハワイとか、リピーターが多いところは新情報も多いです。何回も行っているから、よけいに穴場を見つけてくれるんですね。

ちきりん おもしろいですね。初めての人は、この本に載っているレストランとかホテルに行くけど、リピーターの人たちは「この本に載っていないところ」を教えてくれるわけですね。そういう街は、今は住んでいる人も多いですしね。

石谷 そうですね。

ちきりん では、いまの『地球の歩き方』の情報のうち、投稿などで提供されているコンテンツは1割とか2割とかですか?

石谷 投稿などでの新情報は1割もないですね。数パーセントもあるかないか……。

ちきりん そうなんだ。それはショック。じゃあ、いま私が投稿してもなかなか載りそうにないですね(笑)。

石谷 いや、ぜひ投稿してください。どんどん載せますよ(笑)。

ちきりん ありがとうございます。ところで、30年の歴史のなかで、大きな変化としてはどのようなものがあったのですか?

石谷 一番大きいのは、カラー化したことですね。

ちきりん オールカラーなんだ。それはすごい、紙も違いますよね。昔はかさかさした紙だった(笑)。

石谷 いまは、もう95%くらいカラーです。

ちきりん でも、字は相変わらず小さいですね。私も若い頃はこういうの全部、読み込んでました。今はシニア向けの字の大きい『地球の歩き方』を出したら売れるんじゃないですか?

石谷 それ、いろいろな人に言われるんです(笑)。でも、情報が増えていくから字はどんどん小さくなりますよね。……ところで、ちきりんさんは、次にどこか行きたい国とか地域とかはありますか?

ちきりん そうですね。次の旅行どうしましょう。実は私、お話を聞くまでは、私もこれからは旅行の後、いろいろと投稿しようかなと思ってたんですよ。でも、投稿の部分が少なくなって数パーセントだって言われたので、「そっか、もう載らないのか」と……(笑)。

石谷 いや、新しい情報があればどんどん載せます。ただ、そういう情報がなかなか来ないんです。

ちきりん そういえば私もそうですけど、みんな、そうした情報は投稿するんじゃなくて、自分のブログとかに書く人も増えたのでしょうね。

石谷 Facebookとか。

ちきりん ええ。昔だと、自分が投稿した情報が本に載るってとてもうれしいことでした。当時は海外に行ったこと自体がステータスだったし、それを発信する個人メディアが存在していませんでしたから。でもいまは、海外旅行は趣味の1つだし、お宝情報であればあるほど、他者のメディアではなく自分のメディアに書きたいって思いますよね。

石谷 なるほど。

ちきりん 昔なら、「情報・ちきりん」と載せてもらうことが、すごくうれしかった。今は「載せてもらう」じゃなくて、「自分が載せる」です。そこは大きく変りました。では次回は、『地球の歩き方』がなぜ、ここまでドミナント的な市場展開ができたのか、そのあたりを深掘りしておうかがいたいと思います。(続く)

※第2回は8月6日(月)、第3回は同8日(水)、第4回は同10日(金)の公開予定です。

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