東京都心では設置されている駅を見かける機会も多くなった「ホームドア」だが、全国に目を向けて見ると、思うように導入が進んでいない事業者も少なくない。こうした「設置格差」が生じる原因はどこにあるのだろうか。(鉄道アナリスト 西上いつき)
金持ち鉄道は導入進むが…
事業者に広がる「安全格差」
今年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、鉄道駅のバリアフリー化も加速している。東京都心ではホームドアが設置されている駅を見かける機会も多くなった。
首都圏の鉄道事業者で、特にハイペースで設置を進めているのが東京メトロと東急電鉄だ。東京メトロでは現在、全駅の約7割ほどに設置済み、各線での設置計画の前倒しを掲げている。東急も2020年目標だった全駅設置予定を前倒しし、今年度中に世田谷線を除く全駅に設置することを掲げている。
ほかの首都圏の大手私鉄やJRも、この2社ほどハイペースではないものの、着実にホームドア導入を進めている。だが、全国に目を向けて見ると、思うように導入が進んでいない事業者も少なくない。国は、乗降客数10万人以上の駅にホームドアを導入すると目標を掲げているが、多くの駅ではいまだ設置に至っておらず、基準以下の駅に関してはさらに低い設置状況だ。
ホームドアの設置には1駅あたり億単位の金額がかかるともされており、国が3分の1、自治体が3分の1を上限として補助することになっている。とはいえ、実体としては鉄道事業者側が多く負担しなければならないこともあり、コストは極めて大きい。特に駅数が多い沿線を抱えていたり、財政状況が芳しくなかったりする事業者には耳の痛い話となっている。