――ピタッとワンチーム! まさに、百々さんと梅田本店のスタッフの方々のように。
僕は勝手に百々さんと初めて会った日を「5.31事件」と呼んでいます。

百々 事件(笑)。

――僕にとっては「事件」なんです。あの日がなければ今はない。この本の造本設計はこれでいくと決意できた日ですから。

百々 あの日の別れ際に、
「A5版ハードカバーはいろいろな人から反対があると思いますけど、ブレないでくださいね」とお願いしましたからね。

――そうでしたね。でも僕はプレッシャーには感じなかった。きっと営業・宣伝部のみんなも僕の考えをわかってくれると確信めいた思いがあったんです。

百々 そうなんですか!

――不思議なんですが、そうなんですよ。

百々 不思議ですよね。

――社内では反対はなかったです。

百々 僕はめちゃ反対にあうと思っていたんですけどね(笑)。
ダイヤモンド社でもA5版ハードカバーは、めったにない。
シリーズものでは「グロービスMBAシリーズ」。古くはM.E.ポーターの『新訂 競争戦略』(1995年3月刊)が印象的ですが、最近はあまり記憶がない。だから社内でも反対勢力ばかりだと思っていましたよ。

――確かに、大幅なコスト高になるだけでなく、重版納期も通常より日数がかかる。コスト的に見たら、いいことなんて何もない。でも、あえてそうする意味を社内でプレゼンしました。そうしたらみんな納得してくれたんです。

百々 いい会社ですよね。僕は寺田さんから「A5版ハードカバーに決まった」と聞いたとき、ダイヤモンド社には、目先の利益を追うより、後世に残すべき知的財産が残るほうが大切なのだという文化が浸透していると思いました。

――正直、百々さんと出会えなければ、自信を持ってプレゼンできなかったでしょう。「5.31事件」のおかげです。おそらく僕が営業にプレゼンしているとき、「誰の反論も許さないぞ」という目をしていたんでしょうね(笑)。
つづきはまた次回、お話を聞かせてください。
これまでの『哲学と宗教全史』の連載ダイジェストはこちらをご覧いただければと思います。