「社会の目」が再起を阻む?
日本社会の現実

 現在は、闇社会の相手と顔を合わせることなく大麻を入手できる分、若い買い手たちは、落とし穴の恐ろしさをあまり意識していないのではないか。

 1つめの落とし穴は、もちろん薬物依存症のさまざまな症状である。大麻を乱用すると、五感がさえ渡るなど知覚に変化が起こることはよく知られる。だが一方で集中力の欠如、情緒不安定なども生じる。

 諸説あるが、乱用を繰り返しているとコントロールが利かなくなり、依存症に陥る危険性は高い、と厚生労働省は注意を促す。長期間続けた場合は、幻覚、妄想などの症状が起こるほか、知的機能が低下してものを考えられなくなったり、無気力状態に陥ったりすることもあるという。幻聴による自傷行為や犯罪、事故も後を絶たない。

 2つめは、薬物依存症に対する社会の“目”だ。日本では薬物依存症を病気と捉えず、犯罪と結びつけて考えがちである。大麻所持で逮捕され有罪判決になれば、懲戒処分どころか解雇もありうる。アメリカのようにリハビリ、リワークの体制が充実していないこともあり、再起しづらいのが現実だ。路頭に迷った結果、孤独や自己否定感が募り、つらさをまぎらわそうとますます薬に溺れる人が多いという。

 ビジネスパーソンも含め、誰でも発症する可能性のある薬物依存症だが、特に危ないのは優秀で出世スピードの早い、いわゆる“意識高い系”だ。常に高い目標にチャレンジし、緊張感を抱いている彼らは、ふとしたはずみから大麻のような弛緩(しかん)効果のある薬物に依存してしまうことがある、と秋元氏は言う。

「大学を卒業後、有名企業に入社して営業トップで表彰されたある男性が会社のご褒美旅行で海外研修に参加したんですね。ところが現地で盛り上がり、つい大麻に手を出してしまった。そのときの解放感が忘れられず、帰国後もやり続けていたそうです。成績を維持しなければ、トップを走り続けなければ、というプレッシャーに耐えられなかったのでしょう。

 そのうち依存症となり、妄想などの精神障害が出てきた。とうとうあるとき、道で不審な行動をとったために警察に通報され、20日ほど拘留されることに。その事実が会社に知られ、結局彼は解雇されてしまったのです」