――巻頭・巻末カラージャバラでは、西方のソクラテス、プラトン、アリストテレスが活躍していた時代に、東方ではどんな哲学者・宗教家が活躍していたのか。自分自身、こんな年表があったらいいなというものをどんどん具現化していったんです。
百々 あの本は、歴史に残りますよ。50年たっても消えない!
――きた! 預言者・百々典孝さん。出口さんは、これからの時代に必要な学問として、宇宙物理学、生物学などを挙げておられました。
百々 まさにそうなんですよ。
――先日、出口さんの「ビッグヒストリー」の講演を聞いてきましたが、各学問がタコツボ化している今こそ、大局的なものの見方が大切ですね。
百々 大事なんです。それを出口さんが持ってるはずなので。
――はい。
百々 僕が幼少期に読んで育った『なぜだろうなぜかしらシリーズ』(実業之日本社)の視点はいくつになっても大切ですよね。
――そうですよね。以前、百々さんがこうおっしゃっていましたね。
「大人が子どもの疑問に
きちんと答えられないと、
大人に対する不信感が
子どもに醸成されていく」
あの話、僕も子どもたちに全然できていないんですが、本当にそうだと思うんです。
百々 絶対そうでしょう。大人がさじを投げていたらダメなんです。
きっと出口さんは、そういう大人の態度を許さない子どもだったでしょうし、子どもの好奇心を持ったまま大人になった人。あんな大人ばかりになったら、日本ももっと面白くなりますよね。
――想像するだけで素敵じゃないですか。
百々 そうなんですよ。
子どもと一緒に、
「わからないものはわからない」。
一緒に解決していこうぜとなったらいいですよね。
――本当にそうですよね。「わからないことはわからない」といいながら、トゥギャザー精神で。
百々 それは、編集者と著者の関係そのものだ(笑)。
――そうなんですよね。僕はたまたま運がよく、今から20年前に、光触媒の第一人者でノーベル化学賞候補者の藤嶋昭先生と『光触媒のしくみ』という本をつくったんです。その後、ダイヤモンド社に移って、2017年に『第一人者が明かす光触媒のすべて』を一緒につくりました。
光触媒とは、酸化チタンという白色物質を窓にコーティングしてそれに光が当たると汚れないセルフクリーニング効果から、防臭・脱臭効果、がん細胞撲滅効果まで、幅広くその可能性が世界中で注目されている日本発の技術なのですが、僕はなんの知識もなかったので、半導体の「ハ」の字から藤嶋先生に聞いていった。あのとき、人格者の藤嶋先生が土日を僕のトンチンカンな質問にあててくれ、懇切丁寧なんてレベルじゃないくらいわかりやすく教えてくださった。
僕は、めちゃくちゃ怒られるかと思ったら、感謝された。
「寺田さんのおかげで、わからない人が、何がわからないかをわかった」と。
そんなことがあるのかと思いましたよ。
ぶん殴られるかと思ったら、「ありがとうございます」と大先生からいわれた。
その経験が僕を図太くしてしまったんです。それ以降、初学者代表として、わからないことは正々堂々著者に質問することにした。すると、嫌がる著者もいたのですが、多くの優秀な著者から感謝されることに(笑)。全国数万人の編集者のみなさん、「わからないことはわからない」というと、いいことがあるかもしれませんよ(その反対もあるかもしれませんが!笑)。
百々 それは編集者にも勇気を与える話ですね。
寺田さん、これからも「一家に一冊、絶対ほしい本」を期待していますよ。
――わかりました! 今回は長時間にわたり、熱い取材でしたね。大阪にきた甲斐がありました。
百々 こちらこそ! めちゃ楽しかったです!! さらにさらに『哲学と宗教全史』を一人でも多くの方へ届けられるよう、ともに汗を流していきましょう。
――ぜひに!
百々 最近、たくさんの原稿を読んでいます。でも、「魂がふるえる一冊」はなかなか出会えない。
でも、今回、出会うことができた。僕が死んでもずっと残る本が。
『哲学と宗教全史』の発売は2019年8月8日ですが、僕にとってはゲラを読ませていただいた2019年5月上旬がある種の出産日。
あの偉大な一冊の出産に
立ち会えたことは一生の財産になります。楽しかった!
――それは嬉しいです。となると、「百々典孝氏=助産師」ですか!笑
百々 そうかもしれない。ドラッカーの本が日本で初めて出たときや、『ズッコケ三人組』シリーズの1冊目が出たときの書店員の気持ちと一緒!
――常に大局的にものを見て、少しでも世の中をよくしたい、面白くしたいという百々さんに出会えて本当に勉強になりました。
百々 こちらこそ、ありがとうございました!
(終)