離脱法案が下院・上院を通過
今後の論点を検証する
英下院は1月9日、昨年10月に欧州連合(EU)との間で合意に達した離脱協定法案を巡る本採決を行い、賛成多数でこれを可決した。22日には上院も通過し、23日にエリザベス女王の裁可を経て成立した。2016年6月の国民投票から3年半の歳月を経て、英国は1月末にEUをようやく離脱することになった。
EU離脱後、直ちに移行期間と呼ばれる激変緩和措置が12月末まで適用される。これにより英国とEUの通商関係は離脱前の状態が維持されるため、急激な環境の変化は回避される。この間に、英国とEUは新たな通商協定の締結と発効を目指すが、双方の合意があれば移行期間は2022年末まで延長されることになる。
今後のポイントは、主に以下に述べる3つの点にあると言えよう。
移行期間を延長しなければ
「ノーディール」と同じ状況に
一点目が、新たな通商協定の内容である。英国とEUは新たに自由貿易協定(FTA)を締結する交渉に入るわけだが、その際に議論されるFTAの内容が、現在の英国とEUの通商関係とどれだけ似ているのか、ないしはどれだけ違うのかという論点が出てくる。
EUと袂を分ける以上、英国とEUの双方に関係する経済活動がこれまでと同様に自由に行われることなど、まずあり得ない。とはいえ、経済活動の混乱を軽減したいなら、できるだけ今までと同様のやり取りをできることが、英欧の両方にとって望ましい。英欧FTAの内容をどう詰めていくのか、最大のポイントといえるだろう。
通例、FTAを締結し、発効するためには数年の歳月を要する。ジョンソン首相は12月12日に行われた総選挙の際、移行期間の延長は行わないという強気の公約を立てた。1月8日に開催されたEUのフォンデアライエン欧州委員長との会談でも、年内の英欧FTAの締結を目指す旨を「一方的」に力説したと報道されている。