サイレントマジョリティーに
そっぽを向かれて負けたコービン党首

 英国総選挙の基本的な戦いの構図は、保守党が南部に、労働党が北部にそれぞれ約100~150議席のセーフティーシートと呼ばれる強い地盤を持っていて、その上で都市部の票を取り合うという形になっている。

 都市部の票を取れるかどうかが選挙の勝敗を決めるため、両党はコアな支持者よりも都市部に支持される政策を訴えるようになった。自然と、両党の政策は似てくることになる。

 例えば、1960~70年代の「福祉国家」の時代は、保守党は「貧しき者には分け与えろ」、労働党は「労働者の権利拡大」という具合に、考え方は真逆ながら、福祉拡大というよく似た政策を打ち出す「コンセンサス政治」が行われた。

 また、1980年代から2008年までの「新自由主義」の時代も、トニー・ブレア労働党政権の「第3の道」は、マーガレット・サッチャー保守党政権の「サッチャリズム」を引き継ぎ、発展させたものだった。

 だが、それは両党のコアな支持者を置き去りにすることと同義だった。その結果、不満を持ったコアな支持者が左右のポピュリズム政党に流れることになった。「ポピュリズム」の広がりは、英国に限らない世界的な潮流となっている。

 しかし、現在の選挙においても、この都市部・中道層という「サイレントマジョリティー」の重要性は何も変わらない(第115回)。彼らは、普段はビジネスなど日常生活が忙しく、政治に対して大きな声をあまり上げず、静かである。しかし、有権者全体の中では、圧倒的な多数派なのである。

 コービン党首の失敗は、このサイレントマジョリティーに徹底的にそっぽを向かれたことだ。彼らは確かに、かつてのように新自由主義的な改革を支持してはいない。しかし、彼らは仕事や子育ての「現役世代」として、教育や社会保障などのサービスの充実と、その財源を考慮した財政とのバランスを重視する。自分たちの世代がよければいいのでなく、子どもたちの世代の負担増も憂慮する。また、経済が自国だけで成り立っていないことも、日ごろの仕事から理解し、グローバル社会・経済を全否定はしない。