話を戻すと、過去の記事でも述べた通り、21世紀に入ってから、これまで5年おきくらいの頻度で、「新しいウイルスによる病気のパンデミックが来るぞ」という騒動は3~4回起きています。そのため、日本人の「恐怖耐性」が徐々に強まっているということはあるのかもしれません。

「恐怖耐性」というのは、恐ろしいことが身に迫っていても動じない能力なので、それが強まっているとしたら、本当はよいことではないでしょうか。恐怖耐性の側面から見れば、日本人の心理はまだパニックには至っていない状況なのでしょう。

マスクと自動車のシートベルト
着用しないと危険なのはどちら?

 それでは行動経済学の側面から、こうした状況がなぜ起きているのかを考えてみましょう。

 行動経済学というのは、皮肉をもって定義すれば「人間の行動は経済合理的ではない」という前提に基づいて、人の行動を分析する学問です。わかりやすい例が、「人間は自分が自動車事故で死ぬとは思わない一方で、自分は宝くじには当たるかもしれないと思う」という話があります。自動車事故で死ぬ確率のほうがちょっとだけ高いのに、1億円が当たる宝くじは買うけれど、1億円の死亡保険金が出る生命保険には入らない。それは経済合理的ではないという、人間行動の一例です。

 こうした行動経済学的な洞察をするために、今回はあえて新型肺炎と人間の行動についての問題提起ができそうな話題を、いくつか質問形式で提示したいと思います。まず最初にお訊ねしたいのは、「新型肺炎の予防のためにマスクをつけるのと、車に乗るときにシートベルトをつけるのは、どちらがより重要だと感じるか」という質問です。

「そんなの、どちらもしてるよ」という人にはピンと来ない質問かもしれません。また「そんなの、どちらもしてないよ」という人は法律違反になりますが、ここはそういう話ではなく、「あえて比較すると、どちらを重要に感じるか」という質問です。