『営業はいらない』
三戸政和さんの新刊『営業はいらない』

 現在、エムスリーが展開するサイト「m3.com」を利用する医師は28万人で、国内の医師の約9割にのぼる。このサイトを通じてMR君を利用する医師も増えているため、今や製薬会社の営業活動にMR君は欠かせない存在となっている。

 MR君を使うことは、製薬会社にとって大きな経費削減にもつながっている。エムスリーが公表しているデータによると、MR君を使って医師に情報を認識してもらうためのコストは、人間の60分の1で済むという。

 人間の場合、どうしても情報のばらつきが出てしまうが、MR君は本社管理による情報提供なので、精度の高い情報をくまなく伝えることもできる。

 さらに重要なポイントは、MR君が単に医薬品情報を載せているだけのサービスではないという点だ。MR君は「MRの営業活動をそのままインターネットで実現すること」を目的に作られている。つまりその名前の通り、MR君は人間のMRを代替するサービスなのだ。

 MR君には病院や医師のデータベースが備わっており、データベースにはそれぞれの医師の専門性や特徴、薬の購買状況、情報の閲覧状況といったデータが随時蓄積されていく。このデータに沿ってMR君の提供するコンテンツや提供の仕方は変化する。

 つまり人間のMRが相手の医師に合わせて情報提供や新薬の提案をするように、MR君も医師一人ひとりにカスタマイズされた形でその内容を伝えることができるのだ。

 さらにMR君には、製薬会社から提供された医薬品情報の動画や静止画のコンテンツが豊富に掲載されている。今、MR君はアプリでも提供されているのだが、Yahoo!のニュースアプリのようなデザインになっており、情報がとても見やすい。

 MR君の登場によって、製薬会社の営業戦略は大きく変わった。そして、MRの仕事はテクノロジーによって侵食され、MRの数が減り続けているというわけだ。

 優秀な営業マンが持っている幅広い商品知識は、膨大な情報を即座にダウンロード(閲覧)できるインターネットの情報提供に置き換わり、顧客のニーズにマッチした商品を提供するスキルは、AIを中心としたレコメンド機能が担っていく。テクノロジーが営業マンの能力を超えるのはもはや時間の問題である。

(日本創生投資 代表取締役社長 三戸政和)