砂煙とともに地面から飛び出してくる忍者との格闘。流れる汗や息づかいまでもが伝わってくるような迫力あるアクション映画が『カムイ外伝』だ。
原作は、「週刊少年サンデー」「ビッグコミック」に連載された白土三平の同名コミック。理不尽な階級社会の最下層で生まれ育ったカムイが、一度は忍(しのび)の世界に身を投じながらも、掟に縛られたその世界から飛び出し、自由を獲得した代わりに、昔の仲間に追われ続ける姿が描かれてゆく。
今なお、多くのファンを魅了し続けているこの原作を映画化したのが、日本アカデミー賞最優秀監督賞に輝いた『血と骨』(04年)などで知られる崔洋一監督だ。武闘派との噂もある崔監督に、映画化に至るまでの経緯から、かつての武勇伝までを語ってもらった。
3秒後にはやろうって決めていた
──まずは『カムイ外伝』を監督することになった経緯を教えてください。
崔監督:『血と骨』が終わってから、『血と骨』のプロデューサーと、「次は何をやろうか」って話はしていたんです。ただ、企画を出し合っても、なかなかうまくかみ合わない。「作る意味がある」と思える企画でも、「やり抜こう」とまではいかなかったりして。そんなある日、「『カムイ外伝』みたいなのはどうかな」ってプロデューサーに聞かれ、3秒後には「やろう!」って決めてました。正確に言うと、もっと短い時間ですね。「カムイ外伝ってどうかな?」「やろう!!」って感じだったので、1秒ないくらい。一応、公式には3秒って言ってるんですけど(笑)。
崔洋一(Sai Yoichi) 1949年生まれ。大島渚監督や村川透監督などの助監督を経て、83年に『十階のモスキート』で劇場映画監督デビュー。『血と骨』(04年)では日本アカデミー賞最優秀監督賞ほか多数の賞に輝く。その他の代表作に『月はどっちに出ている』(93)『刑務所の中』(02)『クイール』(03)などがある。 |
──10代の頃からリアルタイムで原作を読んでいたそうですが、1人の読者から、監督として『カムイ外伝』に向き合ったことで、新たな発見や、作品に対する見方の変化などはありましたか?
崔監督:そりゃあ、読者としてリアルタイムに読んでいるときの方が楽しいですよ。頭の中で勝手に、自分が企画者であったり、プロデューサーであったり、監督であったり、主人公のカムイにだってなりきっているわけですから。
今、映画を完成させて思うことは、「これから僕は、昔の自分と同じように原作を愛読してきた何百万人ものファンと向き合わなければいけない」ということ。これが、とても難しい。