米国の鼻血診療ガイドライン、ティッシュを詰めるより圧迫止血が先写真はイメージです Photo:PIXTA

 鼻血(鼻出血)の診療ガイドラインが出たと聞くと「大げさな」と思うかもしれない。

 確かに鼻を圧迫して止血できる程度ならいいが、「血液サラサラ薬(アスピリンや抗凝固薬)」を飲んでいるために出血リスクが高い、あるいは多量の鼻血を繰り返すようなら適切な対応が必要だ。

 米耳鼻咽喉・頭頸部外科学会が先月公開した診療ガイドラインは、3歳以上の小児と成人を対象に「持続・反復性、生活に支障が出る」重症の鼻血について治療方針を定めている。医療者向けだが、最初の対応は家庭でも参考になるので覚えておいてほしい。

 鼻血が出た場合は、まず鼻翼(小鼻付近)を一定の力で最低でも5分以上、圧迫止血する(できれば15分以上が望ましい)。

 たまに鼻の付け根を押さえる人がいるが、鼻血は鼻の穴から1cm程度の入り口付近から出血するケースが多い。したがって鼻の柔らかい部分を目安に、下方の3分の1ほどをしっかり押さえること。小さい子どもはおびえるので座らせて行うといいだろう。

 この際、顔を上向きにしてはいけない。血がのどに流れ込み気持ちが悪くなるからだ。むしろ前傾姿勢で血を鼻先に集めるといい。

 15分以上圧迫しても止血できないときは、出血場所がさらに奥の可能性がある。その場合は鼻に詰め物を入れるのだが、これがくせもの。汚れたティッシュペーパーを詰め込むと感染症の原因になりかねず、止血後に取り出す際にも「かさぶた」を剥がして再び鼻粘膜を傷つけるリスクがあるのだ。実際、診療ガイドラインでは「医療用」の専用パッキング材を使うよう推奨している。

 したがって15分以上圧迫止血をしても血が止まらない、大量に出血している、ふらふらする(貧血症状)場合は、ちゅうちょせず救急外来を受診すること。特に先述した血液サラサラ薬を飲んでいる人は、病院できちんと止血をしてもらった方が安心だ。

 家庭での再発予防は鼻粘膜の保湿が推奨されているが根拠が弱い。また頻繁に鼻血を繰り返す場合は遺伝病や悪性腫瘍も疑われるので一度は耳鼻咽喉科を受診しよう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)