とはいえ本質的には、ブロックチェーンは「パブリックである」場合にこそ、その革新性があります。情報の非対称をなくして効率的な資源配分をする、インターネットの民主化をさらに進めるものとしてつくられ、受け入れられた技術であるという点では、この方法は、本来のブロックチェーンの意義を生かしていないことになるのですが。

秋山進氏あきやま・すすむ/プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役

秋山 平等にしたら競争が起こるので電力を使いすぎ、低コスト運営にするとメンバーが限られて、平等性が薄れると。

高木 エネルギー効率と機会平等をどう考えるかですね。組織の経済学が問題になってきます。

秋山 今、マイナス面についておうかがいしたのですが、もう一つ、たとえば、膨大な量の計算処理を高速で行うことができる「量子コンピューター」を使えば、ハッシュ値をもとにした非改ざんの証明という現在の方法が崩されるのではないか、という懸念への対応についてはいかがですか。

高木 仕組みをアップデートすることで対応できる可能性はあるのですが、問題は意思決定が必要になることです。どの時点から量子対応にする、ということをみんなで決めなくてはなりません。その合意形成は、前回お話しした分散性ゆえに難しいでしょう。ブロックチェーンは全員が平等に参加するものなので、意思決定をするのには非効率なのです。

秋山 なるほど。いろいろな事例をうかがって、ブロックチェーンを使うとメリットがある場面と、そうでない場面がだいぶ具体的にわかってきました。

デジタル化による影響を読み解く
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秋山 さて、高木先生はブロックチェーンを含めたデジタル化、情報技術の進展により、既存の枠組みを超えて内部要素の組み直しがなされる「デフレーミング」という状況が起こっていると主張されています。それについて少しお話しいただけますか。

高木 デフレーミングによって、「分解と組み替え」「個別最適化」、そして「個人化」が進むと考えています。

 すでにいろいろなところで起こっているように、デジタル化は事業やサービスをはじめ、従来のさまざまな枠組みを崩したり、その垣根をなくしたりしています。その結果、細分化された要素を新たに組み直すといった、「分解と組み替え」が起こっています。