ここでは、企業は一度自分たちの持っている事業を分解してみて、何が強みなのか、「中核価値」を定義し直す必要があります。そしてそれをデジタルの技術と組み合わせて新しく価値を提供していくことを考えなければなりません。

 業務のデジタル化にしてもそう。デジタルで業務を効率化、最適化しようとすると、いままで通りの業務のプロセスを組み替えたり、なくしたりしなくてはならない。いままでと同じパッケージは最適ではなくなります。

秋山 全部棚卸しして、「自分のコア」を見つめ直す、ということですね。

個人化が進む社会
埋もれた才能の活用も可能に

高木 また、それぞれのニーズに応じた「個別最適化」が起こります。これには2つあって、1つはプラットフォームのマス・カスタマイゼーションです。

 たとえば、ナイキの靴を自分のサイズ、好みの色の組み合わせ、好みのデザインで発注して、自分だけの一足を買うことができるといったようなことです。自分のプラットフォーム内で扱っている商品を、個人向けにカスタマイズする動きです。

秋山 扱う商品そのものが、ユーザーニーズによってカスタマイズされるということですね。

高木 もう1つは、プラットフォームの外部にある価値とユーザーをマッチングさせるGAFAのようなビジネスです。モノではなく、仲介する情報や仲介する内容、マッチングを個別最適化する。プラットフォームは仲介をしているだけなので、自社のリソースによらず膨大なニーズとシーズをマッチングすることができます。
※供給者が持っている特別な技術や材料のこと

 そしてその場合、プラットフォームには情報が集中し、圧倒的に有利になります。たとえば有望な会社があって、GAFAのプラットフォームで取引をしたら、プラットフォーム上にすべての記録と履歴が残ります。極端に言えば、脅威に感じれば買収するとか、潰すとか、優越的に振る舞うことができる。

秋山 産業構造として寡占化が急速に進みますね。ヨーロッパでは特にそれに反対する動きも活発ですね。

高木 寡占化が進むことについては課題も多いのですが、一方で、デフレーミングによって小さな企業でも自社の「中核価値」を再定義することで、既存のサービスをユーザーに最適化されたものに転換して提供することができます。また、個人のスキルやリソースを個別に特定して取引するビジネスも実現可能です。このように「個人化」が進むことも大きな流れです。

秋山 ブロックチェーンによってすべてのデータが蓄積され、かつその正しさが証明されていれば、得意なことがある人とその能力を必要としている人とを結びつけられる。埋もれた才能の発掘も進みそうですね。

高木 おっしゃるとおり、これまで活躍できなかった人が組織によらず活躍できる機会が増えます。雇用されながら別の副業をするとか、個人の潜在的な能力をあますところなく発揮できます。デフレーミングで起こる「個人化」はまさにそういうこと。個人の力が強い社会になるともいえるでしょう。