「部下の悩みを聞かない上司」を変える

 ある通信会社のひとつのセクションは、ディスカッションで「課員全員が明るく、お互いを助け合える、働きやすい職場にしよう!」という合い言葉を決め、そのために何を実行するか、具体的な行動計画を立てました。

 行動計画の目玉は、月2回行われる、「メンバーの悩みや課題を共有し、相互連携の具体的な行動強化を図る」ための座談会です。

「相互連携強化会」と名づけられたこの座談会には、「ふがいない上司」である部長にも参加してもらうことにしました。「相互連携強化会」の中でメンバーは、部長に悩みを相談し、アドバイスをもらいます。

 ふだんから「部下の悩みを聞こうとしない」ともっぱらの評判だった部長。その部長を「相互連携強化会」を理由に、「部下の悩みを聞かざるを得ない場」に無理やり巻き込んだのです。

 部下の悩みと部長のフィードバックは、シートにまとめ、さらに上席の役員に提出するようにします。これで部長には「逃げ場」がなくなりました。メンバーの悩み相談を適当にあしらっては、そのやりとりをそのままシートに記録され、上司である役員にチェックされてしまうからです。

 それまで部下の悩みに無関心だった部長は、メンバーの悩みを真摯に聞き、アドバイスするように変わっていきました。

「部下や仲間のためにはできるだけのことをしたい」。その気持ちがあるのであれば、部下や仲間の力を借りて、現状を少しずつ変えていきましょう。

 まずは「どのような職場にしたいか」を忌憚なく話し合うことから始め、続いて上司を巻き込んで「部下の声に耳を傾けざるを得ない状況」をつくっていくのです。