フォロワー18万人超!仏教の視点をもって、国内外の方々から寄せられた「人間関係」「仕事」「恋愛」「健康」などの相談に応える YouTube チャンネル「大愚和尚の一問一答」が人気爆発。
「実際にお寺に行かなくてもスマホで説法が聞ける」と話題になっています。
その大愚和尚はじめての本、『苦しみの手放し方』が、発売になりました。
大愚和尚は、多くのアドバイスをする中で、「苦しみには共通したパターンがある」「多くの人がウソや偽りを離れて、本当の自分をさらけ出したいと願っている」「苦しみを吐き出して可視化することによって、人は少し苦しみを手放すことができる」ということに気づいたといいます。
そんな和尚の経験をもとに、この連載では『苦しみの手放し方』から、仕事、お金、人間関係、病気、恋愛、子育てなど、どんな苦しみも手放せて、人生をもっと楽に生きることができるようなヒントになる話をご紹介していきます。
本当の友だちは、
孤独の中からつくられる
私がはじめて「ひとりぼっち」を自覚したのは、小学校6年生のときです。
京都・奈良への修学旅行を控え、バスの席順を決めることになりました。先生は、「最後の思い出だから、好きな友だち同士で座っていいよ」と言い、クラス中が沸きました。私も、声を上げて喜びました。
「クラスで一番の親友、Iくんの隣に座れる!」
そう思ってIくんを見た瞬間、私の喜びは、悲しみと悔しさに変わりました。Iくんがほかの友だちと嬉しそうに手を取り合っていたからです。
ペアがどんどん決まっていく中、私と、もうひとりの男の子が、最後まで残りました。彼は、今でいう特別支援学級の児童です。私は自ら手を挙げて、彼の隣を選びました。
先生は、「さすが、生徒会長!」と褒めてくれましたが、私は少しも嬉しくなかった。人気投票で選ばれたはずの生徒会長なのに、孤独だったからです。
それからの私は、「うわべだけの親友はいらない」と思うようになりました。ひとりでいれば、傷つくことはありません。
中学に入ってからも、高校に進学してからも、私はひとりでした。友だちができても、深く関わろうとはしませんでした。心の中で「自分はいつも、ひとりだ」と言い聞かせ、なれ合うことを避けたのです。
仏教では、「自分の心を観じて、自己の真実の姿を知ろうとする」ことを「内観(ないかん)」といいます。私は「ひとりでいること」を選んだおかげで、結果として自分自身を深く知ることができました。
孤独だったからこそ、他人に振り回されることがなくなりました。誰かに愚痴ったり、甘えたり、頼ったりすることもなく、自立心を育むことができた気がします。
日本の文化の多くが江戸時代に確立されたのは、江戸幕府が鎖国をしたからです。外交・貿易を制限して、孤立状態だったからこそ、歌舞伎、浄瑠璃(じょうるり)、浮世絵といった日本独特の文化を開花させることができたのです。
もしみなさんが「孤独」を感じているのなら、それは、チャンスであることを知ってください。自分の魅力を輝かせたいなら、まずは孤独であるべきです。孤独を受け入れたとき、人間は、本来の自分自身を感じることができます。
寂しさを埋めたり、暇をつぶすためだけに、他人と関わることはありません。友だちをつくるなら、お互いを高め合える関係が理想です。
仏教では、「勝友(しょうゆう)」を持つことを教えています。
「勝友」とは、「優れた友」のことです。知恵と勇気、優しさと誠実さ、堅実さと大胆さ、美しさと豊かさを併せ持った友のことを「勝友」と呼びます。
では、どうすれば「勝友」を見つけることができるのでしょうか。
ひとつは、孤独を知ることです。孤独の中で自分と向き合い、自分の魅力を磨くことです。自分が魅力的になれば、人間関係はあとからついてきます。
そしてもうひとつは、「人から何々をしてもらいたい」という欲を捨てることです。お釈迦様は、「与える者が友だち(勝友)をつくる」とおっしゃっています。「誰かに気に入られたい」とか「誰かにしてほしい」という思いを持つかぎり、心から尊敬できる友人には出会えません。
「勝友」と交わりたいと願うなら、「人からもらう」ことではなく、「人に与えること」を考えてください。
「自分の持っているもので人に与えられるものは何か」を考え、実践し続けていれば、どんな人にも必ず「勝友」があらわれるでしょう
(本原稿は、大愚元勝著『苦しみの手放し方』からの抜粋です)