幸福とはほとんどの人にとっての人生の目標なのではないだろうか。「いや、自分は幸福なんかどうでもいいですね。不幸になる権利が欲しいんです」という『すばらしい新世界』的な人もいなくはないだろうが、少なくとも僕は幸福でありたいと思う。自分の幸福ももちろんだが、近くにいる手の届く人たちも幸福でいてくれたらそれ以上はいうことはない。
だが、そもそも幸福とは何なのだろうか。ほしかったものを手に入れた時、おいしいものを食べた時、僕は幸福を感じるが、どれほどの幸せでもすぐに慣れてしまうのはなぜなのか。年収の高い人は低い人よりも幸せなのか。幸福感と生活の質はどの程度関係しているのか、我々は自分の幸せを維持するために、何をどうしたらいいのだろうか。本書『幸福の意外な正体 ~なぜ私たちは「幸せ」を求めるのか』は、そうした数々の疑問について研究データを元に幸福の実態を明らかにしていく。本書は、原書が2005年に刊行され、その後本邦では『目からウロコの幸福学』として一度刊行されていたものの改題&再編集バージョンであるが、幸福学についての基本的を抑えている良書なので、ぜひとも今回紹介させてもらいたい。
お金があれば幸せになれるのか。
たとえば、気になる問いかけの一つに「お金があれば幸せになれるのか」がある。今よりももっと金があればできることも増えるし、幸福度は金があるほど上昇していくのが自然なように思う。だが、実際には金銭から得られる幸福感には限度があるようだ。たとえば、過去半世紀のあいだに先進国の一人あたりの所得は何倍にも増えているが、幸福度に大きな変化はない。