レバノンの首都ベイルートに夕闇が迫る頃、カルロス・ゴーン氏は自宅近くのレストランの奥まった隅で、薄明かりの中で席についた。ゴーン氏は、近づいてきたウエーターにアラビア語でエスプレッソを注文した。  ボディーガードは周囲を見回した後、姿を消した。レバノン人ビジネスマンのグループが何組か、近くで静かに会話をしている。彼らはかつて自動車業界の大物だったゴーン氏の存在をほとんど気にかけていないようだ。ゴーン氏は昨年末に軟禁状態に置かれていた日本の自宅から脱出。大きな黒い箱に隠れてプライベートジェットに運び込まれ、国外逃亡したことで、世界中の大ニュースとなった。