長期的なファイナンス戦略を立てられるか

朝倉:ファイナンス力が事業成長のリミットを決めるのだとすれば、何が資金調達の可否を左右すると思いますか?

村上:現状のスタートアップの資金調達は、外的・内的環境要因で実施されていることが多いように見えます。「大きく資金が取れるタイミングだから今のうちに調達しておこう」だとか、「資金が減ってきたので調達しよう」という発想ですね。

だけども、本当に大事なのは、そうした環境に左右されることではなく、自発的に長期的な戦略をしっかりと描き、その戦略をエグゼキューションプランに落とし込むことができるかどうかではないでしょうか。どれだけ資金を持っておくべきか、バランスシートを使うべきか、デットファイナンスを活用すべきか、担当者の採用、先行投資の有無、IPOのタイミング、それまでの資金をどのようにコントロールするかなどを、自発的に考えることが重要なのだと思います。

朝倉:子どもの頃を思い返すと、「おばあちゃん、貯金が無くなったからお小遣いちょうだい」ではなくて、「あらかじめ年間を通して何に使うかを計画しておきましょう」ということですね。

村上:そうですね。景気のサイクルは通常7年だと言われていましたが、リーマンショック以降を考えると、今回は10年超のサイクルなんですね。それに伴い、市場がクラッシュすると、景気が戻る速度も1〜3年はかかると思われます。そのため、「今年の資金繰り」というよりは、「数年の資金繰り」という長期目線で考える必要があるでしょう。スタートアップ経営にとっては、大きなチャレンジになりますが、長期的な視点での資本政策が可能かどうかは、差がつきやすい部分でもあるため、意識しておくべきではないでしょうか。

*本記事はVoicyの放送を加筆修正し(ライター:代麻理子 編集:正田彩佳)、signifiant style 2019/11/13に掲載した内容です。