なぜ出資元の多様性が増したのか

朝倉:海外投資家だけでなく、以前はスタートアップへ投資していなかったような国内機関投資家やPE(プライベート・エクイティ・ファンド)からの投資も最近見受けられるようになってきました。冬の時代の到来によって、失速するスタートアップもあれば、新たな投資家から出資を受けることで成長するスタートアップも出てくるでしょうね。

村上:これまでの日本の未上場マーケットは、グローバル化と多様化が極めて遅れていました。しかし、グローバル化・投資家の多様性化が進んできた現在では、特定の投資家からは評価されなくとも、別の投資家からは評価される可能性があります。投資家の多様性が増すことによって、諦めずに様々な投資家と話す意義も増すでしょう。

朝倉:「ベンチャー投資バブル」と言われる一方で、このようにニューマネーが流入してくるということは、他のアセットクラスと相対比較すると、日本のスタートアップ市場に妙味があると思われているということなんでしょうね。

村上:そうだと思います。「金余り」ということで言うと、一時期のプライベート・エクイティ・ファンドへの資金流入が参考となるでしょう。大型投資をするプライベート・エクイティ・ファンドにお金が流れたのも、結局他に適当な投資先がなかったからです。お金の流れは、投資対象であるアセット起因で決まるのではなく、余剰資金の状況によって決まります。他に妥当な投資先がなかなかないために、スタートアップにお金が集まってきているということだと思います。

小林:普段は入ってこないアセットクラスの運用者が、特定の投資領域に入ってくる時は、景気サイクルの変曲点であることが多いですよね。新たに参入してきたアセットクラスの人たちは、従来とは異なる見方をします。それが多様化に繋がる一方で、ミスプライシングが起こりやすくもなります。

先日のWeWorkの一件ではないですが、ディープポケット(大きな資金力を持つ投資元)からのミスプライシングにより、混乱が生じる可能性もあります。スタートアップ側も注意する必要があるでしょう。