リクルートオーディションリクルートオーディションでは、社長と学生が同じテーブルを囲んで、お互いにざっくばらんに話す機会を持てるのが大きな魅力だ Photo:Diamond

 行われていたのは、学生と企業のマッチングを行う「リクルートオーディション」。学生は6つのテーブルに8~9人ずつに分かれ、6名の社長や役員が順番に周り、直接交流できる座談会を実施。

 その後、学生は「もっと話を聞きたい企業の社長・役員」を3人、企業は「気になる学生」を15人選び、マッチングを行う。1社につき、マッチングした3人の学生がステージに呼ばれて、そのまま社長らとの食事会に向かっていった。

 このイベントを実施したのは、中小企業やベンチャー企業の就職支援を行うプレシャスパートナーズだ。実際に同イベントは10月、11月、1月、2月にも実施。10月に開催したイベントをきっかけに、4人に内定を出した企業もあるという。

「経団連ルールの廃止によって、(大手企業の採用が早期化すれば、自社など見てくれなくなって)ますます採用が厳しくなると、中小・ベンチャー企業経営者の危機感はとても高まっていた。そこで、2021年卒からこのリクルートオーディションを行うことを決めた」

 イベントを実施した経緯をこのように語るのは、同社の高崎誠司社長。これまでの就活イベントとの大きな違いは、「社長」「役員」といった経営トップが学生と直接、ざっくばらんに話ができる機会を作ったことだ。

プレシャスパートナーズ高崎誠司社長プレシャスパートナーズ・高崎誠司社長 Photo:Diamond

「学生から中小・ベンチャー企業が選ばれるには、『この社長と働きたい』と思ってもらえることが大切。小さい企業であれば、社長と合う・合わないは非常に大事なため、学生側にそうした判断をしてもらう機会にもなる。

 また、社長が直接採用の場に出ていくことで、自社に必要な学生を『経営者の直感』で見極めることができる。“平均的に優秀”な学生を選びがちな人事担当者には、なかなかこれはできない」(高崎社長)

 このように「社長力」を活用することで、大手企業、メガベンチャーなどとの天秤にかけた際も、「あの社長についていきたい」という気持ちを持たせることができるという。しかし、いくら社長に魅力を感じていても囲い込むのは難しい。しかも、この時期はまだ大手企業の採用が始まる前。「名も知れない中小・ベンチャー企業」に子どもが入社を決めたことを、不安に感じる親も少なくないからだ。

「いわゆる“オヤカク(親に承諾を得る)”のために、内定後の面談で親からの質問や不安に答える機会を設けるなど、さまざまな対策が必要になります」(高崎社長)