JTは今年から「3月選考」実施
金融機関も5月には選考か

 では、多くの中小・ベンチャー企業、メガベンチャー企業も脅威に感じている大手企業の採用活動はどうなっているのか。

 ディスコの武井氏は、「大手でも、前倒しをするケースが目立ってきている」と指摘する。実は2019年卒学生から、これまで経団連加盟企業では禁止されていたワンデーインターンシップが解禁になり、大手企業に広がってきた。

「インターンシップは採用とは切り離して行われるが、それをきっかけに学生は企業を認知して、就職先として受けたいか判断をするようになる。インターンシップで印象が良かったりすると、受ける動機付けになる」(武井氏)

 つまり、インターンシップは採用情報の広報が解禁される前に行える、「業界・企業説明会」のような役割を果たしているといっていいだろう。

 実質的に早まっているのは“説明会”だけではない。3月1日以降は政府主導の「就活ルール」どおりに、多くの大手企業で怒涛のエントリーシート受け付け、筆記試験や適性検査などが始まるが、3月以前からすでにホームページでスケジュールを発表し、エントリーシートの受け付けを行っている企業もある。

 日本たばこ産業(JT)は、総合職の選考について、3月選考と6月選考の2つを実施する。3月選考については、1月23日締め切りを皮切りに2月24日までエントリーを受け付け、3月20日から一次面接・最終面接を実施、4月には内々定を出す予定だ。こうしたスケジュールは、2021年卒が初めてだという。

「経団連の指針が廃止になったことをきっかけに、学生にとって望ましい採用方法を考えたところ、6月選考が本当に学生のためなのかと疑問を持った。そこで、長期休暇を利用した3月選考が1つの方法ではないか、と考えたのが大きな理由だ。

 また、就職活動が早期化・長期化するなかで、『内定をもらった企業からオワハラを受けている』といった内容の電話を学生から何件ももらっていた。学生の企業選択の自由度を高める意味でも3月選考と、急な変更に対応できない人のためには6月選考を行うことを決めた」(JTたばこ事業本部事業企画室採用研修担当・神谷なつ美次長)

 6月の面接開始ではとても間に合わないと対応を早める企業は、ほかにもある。ある金融機関の関係者は、6月1日の面接解禁を前に採用活動を始める予定だと明かす。

「一部の採用コースについては、5月から4、5回の『面談』を行い、6月1日には一斉に内々定を出す予定。あくまで面談なので、『なんでうちの会社に興味があるの?』というようなフランクな聞き方をする。6月1日以降はもっとかしこまった形になるが、聞き方が異なるだけで、学生から聞き出したいことは同じ」(金融機関の関係者)

 採用活動においては、中小企業、ベンチャー企業、大企業がそれぞれの事情を抱えて早期化が進んでいるが、共通して持っているのは「優秀な学生がほしい」という思いだ。企業の駆け引きが行われるなかで、毎年少しずつ早くなっていく就活スケジュール。2年生から就職活動をするのが当たり前、近い将来は1年生で内定を持っている学生も現れるかもしれない。

(ダイヤモンド編集部 林 恭子)