インフルエンザは致死率0.1%で、ワクチンも治療薬もありますが基本的には自然治癒する病気です。でも、みんなが放置すると子どもや高齢者などハイリスクの人が危なくなる。自分が感染症から身を守るということはハイリスクの人を感染症から守るということでもある。あなたは危なくない、ただ、あなたの見知らぬハイリスクの人を守る、そのために防ぐ、ということなんです。

 そうしたことをまとめた24日の専門家会議の見解は、日本国民に共有してもらいたいコンセンサスとして出したつもりでした。委員の中にはリスクコミュニケーションの専門家もいるので、普段の役所が出すメッセージとは違うよ、というつもりで出したのですが…。当然のことながら国の出すメッセージの方が伝播(でんぱ)は早いし強いですからね。

──本来は専門家会議が感染対策を決めるべきはずなのに、そうなっていない。

 専門家会議は全体の方針やポリシーを決める場であるべきだと思う。「この病気に対してどこまでどんな対応をする」という、理想論かもしれないが絵を描くことが本当の役割だと思う。現在は小手先の事項について諮問されるだけです。委員の力が足りないといえばそうだけど、本当はそういうのを仕組むべきだと思います。

 感染者が少ないうちとかじわじわ広がっているうちは、医学的なことだけで説明できるんだけど、一定の社会問題になってくると政治や力関係、もちろん経済的な問題も絡んでくる。そうなると僕らはもうわからない。だって経済封鎖してもいいって言ってる人がいるくらいですからね。

 とにかく、この新型コロナウイルス対策を政争の具にしてほしくないですね。格好の材料ですから。09年の新型インフルの時に僕が最も頭にきたことって、パンデミックの最中に総選挙をやったことだったんです。感染の最中に対策を中断して、その間選挙カーで叫びまくって、政権が代わったんです。政治ってそういうことをやりかねないですからね。