政府は「冷静な対応」より
「買い占め自粛」を呼びかけるべきだった

 政府が冷静な対応を呼びかけるのは、当然である。劇場主が火災の時に「走らないで」と放送するのと同じだからである。しかし、それを人々が聞き入れるか否かは、全く別の問題だ。

 自分の後ろに長い列ができている時、棚に残った2週間分のトイレットペーパーを全部買うのは、倫理観には反するかもしれないが、経済的には完全に合理的な行動である。

 そうだとすれば、「在庫は十分あるから冷静に」というのではなく、「少ない在庫を買い占めるようなひどいことはしないで」と呼びかけるべきではなかろうか。

グローバル社会では
人々の倫理観にも頼れない

 ただし、問題はそう簡単に解決するわけではない。日本政府が「買い占めるようなひどいことはしないで」と呼びかければ、日本人は聞き入れるかもしれないが、世界には日本人と倫理観を異にする人が大勢いるので、そうした人が買い占めてしまうリスクは残る。

 日本人だけが倫理観に従うと、すべてのトイレットペーパーを外国人に買われてしまう、といった最悪の結果にもなりかねない。

 経済合理性に訴えられないのみならず、倫理観に訴えることも意味がないとすれば、これは極めて複雑で困難な問題だといえそうだ。