新型コロナウイルスの感染拡大が、企業にも大きな影響を与えている。「もしも自社が感染『当事者』になってしまったら……」と不安に思う経営者は少なくないだろう。広報活動経験の少ない中小企業はなおのことだ。不安をあおらず、リスクを最小限にとどめるポイントとは。社内外への情報発信の要諦を解説する。(危機管理コンサルタント 中村峰介)
「情報発信どうすれば?」
新型コロナ感染拡大に戸惑う企業
「もしも当社運営施設で感染者が出たら、世間に公表しなくてはいけないのでしょうか?」
新型コロナウイルスの影響が日に日に拡大する中、筆者の顧問先企業から、このような問い合わせが相次ぐようになっている。
衛生管理、勤務形態など労務管理、そして収益悪化を最小限に食い止める方策――。いま新型コロナウイルスは企業に対し、あまりに多岐にわたる懸案を突きつけている。
そこに、感染に関わる「場所」として個別の企業や施設の実名が、メディアで報道されるようになった。自社施設で働く人から感染者が出たNTTデータや電通、複数の感染者の利用施設として名前が出た千葉県市川市のスポーツジム、感染者が参加したイベントの開催場所として報じられた「新丸の内ビルディング」、同じく大阪市内のライブハウスなどだ。
これが、企業経営者の新たな悩みのタネとなっている。とりわけ、広報活動や対外情報発信の経験が少ない業種や中堅以下の規模の企業にとっては、勝手が分からない分野だけに不安が膨らむばかりだ。