さらに今回の新型コロナ騒動では、経済的な落ち込みが確実視されている。それは「雇用不安」が起きるということだが、こういう時に真っ先に被害を受けるのは弱い立場の人間であり、特にシングルマザーたちが大打撃を受けることが予想される。ただでさえ半数以上が貧困層といわれるシングルマザーが、さらなる困窮に追いやられる。そうした事態が起きる可能性が大きいだけに、まだ騒動が収束していないいまのうちから、「その先」の対応策を考えておく必要がある。国の政策も重要だが、民間にもできることがたくさんあるはずだ。

 特にシングルマザーの困窮は、子どもの貧困にストレートに結びつく。当たり前だが、子どもの貧困は親の貧困が原因だからだ。日本の子どもの貧困率はOECDに加盟している36カ国中ワースト2位、母子家庭に限ればワースト1位だ。ただでさえ最悪なのに、このコロナ騒動でさらに悪化することが危惧される。

シングルマザーが
子ども食堂に否定的な理由

 ところで「子どもの貧困問題」を考える時、日本人はみんな、子どもばかりに目が行く。よって子ども食堂、子ども宅食、学習支援など、子ども支援のプログラムばかり増える。もちろんそれがダメとは言わない。子ども支援が増えるのは良いことだ。しかし、重要な受益者である母子家庭のシングルマザーたちの評判はあまりよろしくない。少なくとも僕がヒアリングしてきた限りは、否定的な意見が多い。なかには「自分の子どもは絶対に行かせない」と言い切ったシングルマザーもいた。それはなぜか。

 支援側のNPOによると、その理由は「子ども食堂に行ったり、子ども宅食を受け取ったりしたら、あそこの家は貧困家庭だとバレてしまう」からだという。しかし、理由はそれだけではない。シングルマザーが子ども食堂に否定的な本当の理由――それは「人間の尊厳」「母親としての尊厳」に関係している。たとえば、ある母親は子ども宅食を受け取っているが、「お米はもらうけど、野菜はいらない」と言っていた。それはなぜかというと、「お米は主食だから毎食同じでもいいが、おかずくらいは自分たちの好きなものを作って食べたい」からだ。

 「自分の好きなものを買う」という行為は、人間の尊厳に関わることだ。たとえば、小学生の子どもたちに不可欠なランドセルもそう。このランドセルが毎年入学シーズン前に児童養護施設に贈られてくることは、読者の皆さんも聞いたことがあると思う。当然ながら贈る側はかわいそうな子どもたちのためにと善意でやっているわけだが、実は施設の職員も子どもたちも迷惑していることが多い。もちろんハッキリと迷惑だと言う職員も子どももいないだろうが、現場の本音はありがた迷惑というのが実態だ。児童養護施設では就学に必要な学用品代が支給されていることもあるが、理由はそれだけではない。子どもたちにとって何より重要なのは、自分で好きなランドセルを買いに行くこと。しかも、できれば親と一緒に買いに行きたい。それが本音なのだ。