日本の児童養護施設で暮らす子どもの大半は、親がいながらも、虐待や貧困などの理由で保護されている。したがって施設の職員も、何とかもう一度、親と一緒に暮らせるようにしてあげたいと思っている。特に小学校入学は親子関係修復の大きなチャンスであり、入学に向けて一緒にランドセルを買いに行くことがとても重要だという。残念ながらそれが叶わない子は養護施設の職員と一緒に買いに行くわけだが、いずれにしても「自分で買う」という行為が、子どもの尊厳を守るために必要なのだ。

 これは、前述した子ども宅食のケースでも同様だ。自分の好きなものを食べたいからこそ、野菜はいらないとなる。子ども食堂もそうだ。たとえばどこかの町に子ども食堂ができたとして、貧しい母子家庭の親子がそこに行ったとしよう。その時に母親はどう思うか。子どもに対して「お腹いっぱい食べられて良かったね」とは思わないはずだ。むしろ「ゴメンね。こんなところでしか、お腹いっぱい食べさせてあげられなくて」と思うだろう。そして、お母さんの「ゴメンね」を聞きたい子どもはいない。もちろんシングルマザーだっていろいろなので、全員そう思うわけじゃないかもしれない。実際、「私だったら子どもを行かせる。だって食事を作らなくていいから楽でいいじゃない」と笑って話したシングルマザーもいた。見方は人それぞれなのだが、しかし彼女たちに共通している意見がある。それは「子ども食堂は一時しのぎでしかなく、母子家庭の貧困に対する本質的な支援にはならない」というものだ。

経済的自立に有効な支援とは

 では、本質的な支援とは何か。それはズバリ、「経済的自立のための支援」である。そもそもシングルマザーは、「自分が頑張ってこの子を食べさせていく」と決意して離婚した女性たちだ(死別したママだって同様の決意をしたはずだ)。そこに母親としての矜持があり、尊厳がある。子どもたちだって、「お母さんが頑張って仕事をして、稼いだお金で家族を守ってくれている」と思うからこそ、母親への信頼と愛情を感じることができる。誰かに食事を与えてもらっているお母さんより、自分で稼ぐ母親のほうが誇りに思えるだろう。

 世の中にはいまだに偏見や誤解がはびこっているようだが、母子家庭の子どもたちには「良い子」が多い。なぜなら母子家庭の子どもたちは、自分が良い子でいなければお母さんに迷惑がかかるという心理が働くからだ。子どもは本能的に母親を守ろうとする。母子家庭の子どもならなおさらだ。だからこそ、母子家庭の子どもたちは自分の母親を誇りに思いたい。子どもたちの誇りを守るためにも、必要なのはシングルマザーの経済的自立である。

 そこで僕が有効だと考えるのが、「シングルマザーのスタートアップ」だ。シングルマザーからスタートアップを量産し、成長させ、シングルマザーの雇用をさらに増やす。当たり前だが、シングルマザーが起業した会社だからこそ、シングルマザーが働きやすい環境が生まれるからだ。 しかしそうは言っても、シングルマザーからそう簡単にスタートアップは生み出せないだろうと考える人も多いだろう。ましてや、今回のコロナウイルス騒動で世界恐慌が起きることも危惧されている状況下ではなおさら困難だと思うだろうが、そうでもない。

 2016年の熊本地震の時には、多くのシングルマザーが仕事を失った。そんな中で「仕事がなければ、自分たちで作ろう」と立ち上がったママたちがいた。そのメンバーが一般社団法人スーパーウーマンプロジェクトという組織をつくり、独自の熊本発ブランドを立ち上げ、カフェをオープンさせ、熊本女子の情報発信ウェブメディアを運営し、さまざまな企業とコラボして商品開発を行い、いまでは独身・既婚女性も巻き込んで大きく成長している。

スーパーウーマンプロジェクト
http://s-woman-kumamoto.com

 シングルマザーは強い。なぜなら、覚悟が違うからだ。熊本地震のような大きな震災にも負けなかった。だからこそ今回も、未知の感染症という災害にも負けないはずだ。僕はそう思う。

(ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソーシャルプランニング代表 竹井善昭)