男性も「外見」は気になる、がん治療時のアピアランスケア写真はイメージです Photo:PIXTA

 男性がん患者の「アピアランスケア」ガイドブックが相次いで発行されている。

 1月には国立がん研究センターから「NO HOW TO メンズのがん治療。髪とか爪とかプライドとか。」(続編も発行予定)が、2月4日には資生堂と公益社団法人日本対がん協会から「男の整容本」が公開された。ぜひダウンロードしてみてほしい。

 アピアランスケアとは、がんの治療に伴う「外見上の変化」に対するケアのことを指す。脱毛対策の「ウイッグ」を思い浮かべるが、手術後の傷や欠損、ストーマ(人工肛門)、抗がん剤の副作用による手足の皮膚、爪の剥落など身体機能の変化への対応も含まれる。

 がん治療に伴う外見の変化は決して女性だけの問題ではない。「男は見た目じゃない」とうそぶく昭和世代だって、内心では「外見」を重視しているのだ。

 国立がん研究センターの野澤桂子氏らは、2015年1月に外来通院中の男性がん患者949人(有効回答数823人、平均年齢65.3歳、65歳未満は79.4%)を対象に、外見上の変化に関するアンケート調査を行った。65歳未満の回答者のうち81.8%が雇用を継続している。

「職場において外見が重要だと思いますか」という質問には全回答者の64.5%が同意し、このうち「強くそう思う」が23.6%、「かなりそう思う」が40.9%だった。65歳未満に限ると、それぞれ31.3%、42.8%と7割以上が「外見」を重視している。

 さらに「仕事の評価に外見が影響すると思うか」では、59.5%が「そう思う(かなりそう思う19.4%、どちらかといえばそう思う40.1%)」と回答した。

 65歳未満では「かなりそう思う」が27.1%、「どちらかといえばそう思う」が44.1%で、こちらも「外見」の影響を7割が不安視していることがわかる。

 外見や機能の変化で「社会的役割」を失うのではという不安感は、むしろ社会に背を向けさせ、孤立につながりやすい。「男が見た目にアレコレ言うなんて……」と悩むよりも、ガイドブックを片手に主治医に相談してみませんか。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)