公共交通機関を利用していると、スマートフォンの使用や座席の座り方などの車内マナーを巡り、自警団さながら取り締まろうとする人に遭遇することがある。そのような場面で穏便に済ませるにはどう振る舞うのが吉なのか。また、自身が逆の立場で、他人のマナー違反に対してイライラがこみ上げてきたらどう対処すればよいのか。怒りとの付き合い方について専門家に聞いた。(清談社 松嶋千春)

努力が報われない鬱憤が
他者への怒りにつながる

怒りへの適切な対処の仕方を学びましょう。
怒りを他人にぶつけることは、一種の快楽という側面もあります Photo:PIXTA

 帰宅ラッシュの電車内で、筆者が手元のスマートフォンに目を落としてひと息ついていると、突然「スマホを使うな!」という怒号が響いた。周囲の何人かはそれとなくスマホをしまったが、イヤホンをつけた女性は気付かないままスマホを操作し続けた。すると、先ほど叫んだ男性が女性の真後ろに立ち、「電源を切れ」とにじり寄った。その光景は、端から見ても注意の域を超え、狂気じみていた。

 海外では、電車内で通話する人がいても、周囲は我関せずということが多い。しかし日本の場合は、その場に居合わせる人の属性によって空気の読み合いが始まり、ときに注意をする者も現れる。ここまで派手にブチ切れるのはまれなケースだとしても、誰しもマナー違反に対してイラッとした経験はあるのではないだろうか。

 日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介氏は、他人の行動に対して怒りの感情を抱く背景を次のように分析する。アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで開発された、怒りの感情と上手に付き合う(マネジメントする)ための心理トレーニングである。

「日本社会においては、『正しい人が幸せになれるはず』『努力は報われる』という自己責任論が強く働いていると思います。でも実際は、現実と道徳との間に大きなギャップがあって、正しい行いをしたところで報われないし、格差は広がる一方です。そういった不満が噴出し、他人の行動に対して過剰に反応してしまうのではないでしょうか」(安藤氏、以下同)