数字を見て実態を見ていなかった
金融機関に警鐘を鳴らす結果に

 この10年余りの企業倒産減少の要因としては、地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会といった従前の裁判所以外の事業再生にかかわる組織が整備されたことが挙げられる。事業再生ADRなど法的整理に頼らない再生パッケージも充実し、金融機関側もこうした組織、制度を活用して、再生が必要な企業のソフトランディングを目指していた経緯がある。

 また、企業の資金繰りが悪化しても2009年の中小企業金融円滑化法とその後の金融庁からの指導もあり、金融機関による返済のリスケジュールが広範にわたって行われてきたことも大きな影響を与えた。

 ただ、長年にわたる粉飾が発覚したとなると話は別だ。会社側が隠し切れずにカミングアウトすることもあれば、デューデリジェンス(企業の価値やリスクなどの調査)の結果、判明することもある。いずれにしろ粉飾を行っていた企業では、企業と金融機関の信頼関係が前提となる前述の再生パッケージを選択肢に入れることは困難になるだろう。

 粉飾に強い疑いを抱いていた金融機関と実態を開示される寸前で気付いた金融機関では、支援の足並みもそろわない。結果的に裁判所が中心の法的整理を選択せざるを得ず、倒産増加の要因となった。

 企業と金融機関の関係は時代の変遷とともに移り変わってきた。バブル崩壊後の貸し渋り、貸しはがしから一転、リーマン・ショック以降は金融機関がリスケジュールに応じることが一般化、事業再生に一役買う一方で、「借りた金を返さなくてもいい」という誤った認識につながり、経営者のモラルハザードを招いた側面もある。

 近年の低金利はさらに両者の関係性をいびつにさせ、収益を上げる必要のある金融機関は投資用不動産に絡んだ不正に手を貸すことにもなった。今回の粉飾企業の倒産増加は、木を見て森を見ず、数字を見て企業活動の実態を見ていなかった金融機関に警鐘を鳴らすことになる。

(帝国データバンク 東京支社 情報部)